第21回『昼顔 −平日午後3時の恋人たち 』

確かに不倫って恐ろしい

不倫が「既婚者の浮気」と同義になったのは『金曜日の妻たちへ』以降だそうで、正式には「不貞行為」、ずばり「配偶者以外との性交」のことです。キスも添い寝もOKだけど、入れたらアウトという話です。で、たとえば夫が不倫した場合、法的にどんな措置がとれるのか。日本には現在姦通罪はないので、民事での慰謝料請求のみとなりますが、特徴的なのは「不倫した配偶者とその相手、両方に慰謝料請求ができる」という点です。性交が行われたであろう証拠と相手の女性が結婚の事実を知っていた証拠があれば、女性に相場で200万、うまくすれば700万ぐらいの慰謝料が請求できる。もし相手が払えない場合は給料の差し押さえも可能で、つまり女性の職場にも思い切りバラせてしまう。

金も仕事も社会的信用も絶たれた状態というのは「社会的抹殺」と同じことで、夫に不倫された妻が、夫ではなく相手の女性にここまで復讐できるというのは驚愕です。仮に不倫をやめたとしても、慰謝料請求の権利はなくなりませんから、女性にとってはもはやホラーの世界。だから北野先生は話し合いの場で紗和と即座に別れたと思われます。しかしまさか、入れると入れないのとでこれほど大きな差があるとはね。そこ?問題になるのはほんとにそこでいいの??

欧米圏では不倫がバレれば即離婚、それを見越して入籍しない事実婚も多いのはよく知られています。フランスのように不倫がバレても大統領でいられる国もあるけれど、アメリカではタイガーウッズが身ぐるみ剥がされた上に「セックス依存症」を告白させられいてたりして、不倫が発覚となると社会的制裁も日本よりはるかに強い国もあります。しかし、そうであっても「不倫相手を罰する」という思想はないようです。結婚とは夫婦間の契約なのだから、不貞も夫婦内で解決という欧米の感覚は至極まっとうだと私は思いますがね。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。