パロディーを極めてこそのカルト!
一方でそんなゆるパロの中にも二話だけ、かなり大掛かりなパロディーが出てくるんです。ひとつは第九話の「脱出せよ!忌野家 呪いの迷路」。霊界から来たリフォーム屋に家を迷路のように作り変えられてしまうという話で、これは一話丸々『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(イタリア語フル動画どうぞ)のパロディー。完成度という意味でも全十三話のなかでもかなり来てます。そしてこの『怪奇大家族』をカルトドラマの傑作となさしめたのが第八話「実録!冥土の仁義」。笑いという意味でも、パロディーでありながらオリジナリティー溢れるという意味でも、文字通り総毛立ち膝立ちで観賞いたしました。
忌野家の霊担当としての日々に疲れ果てた清四が、街で悪いやつらと喧嘩して瀕死の重傷を負う。そんな彼が死体と間違えられて送り届けられたのが、無縁仏のスナック「まあ冥土」。そこで清四は霊とは違う、死体という新たな存在に囲まれながらバーテンとして働くうちに、「死とは何か」という根源的な問いに直面する……あらすじはこんな感じですが、この話、霊と無縁仏(身元不明の死体)に階級差があるという設定なんですね。このスナックを経営しながら無縁仏たちを守っている森(松重豊)は「メメント森」と揶揄される霊界の鼻つまみ者。まあ冥土で働くホステス達は言います。
「何かといえば”無縁仏の分際で”だ」
「ちゃんと葬式出したものだけが立派な幽霊なんだってさ」
「幽霊に上等も下等もあるかってんだ」
なんだか知らないけど霊界の差別構造へ鋭く切り込んじゃってます。そこに送り込まれる霊界からの最強の刺客、さあメメント森、どう皆を守る?その時清四は!?と、やたら緊迫する展開なんですがそれというのも実はこの話、『仁義なき戦い』や健さんの『昭和残侠伝』のパロディーだっていうんですからね!森が怪我した清四に包帯をまくシーンが健さんと池部良だって、困ってしまうほどの細部への凝りようを見せつけた後に雪崩打つ、突然の「メメント森」発言。仁義を藤原新也と無理やり絡めつけるこの強引さ。完璧に意表をつかれました。藤原新也のあの写真集を見た人にしか分からない死体とメメント森のつながり、そこから森が「メメント・モリ(死を想え)」に繋がっていく様子はもう、爆笑を超えて感動です。全体のトーンとしては「パロディーシュールの鬼才」しりあがり寿のパロディーだそうで、それならば「メメント森」という巴投げも納得がいくというものです(関係ないんでしょうけど最近『オーイ・メメントモリ』という本も出してます寿氏)。このシュールさ、バカっぷり。霊界の差別構造という斬新さ。全てにおいて、脱帽しました。もう全編に渡っていちいち紹介していきたいほどの粒ぞろいのシークエンスに、敬礼!