第22回『恋するリベラーチェ』

マット・デイモンの底知れぬ懐の深さ

ダグラス演じるリベラーチェの「恋」に人生の全てを翻弄された若い恋人スコットを演じたのはマット・デイモン。この映画は滑稽さと陰鬱さがギリギリでせめぎ合う感じが独特で、全く浮世離れしているリベラーチェを前にどんどん雰囲気が変わっていくスコットの役が成功しなければ、その微妙なバランスは実現しなかったと思います。マット演じるスコットは、薄化粧のお顔に若々しい体、長めの金髪も可愛らしい17才のドッグトレーナー。少し頭の軽そうな純粋すぎる性格も災いして、リベラーチェのペットにされてしまうのですが、スコットはそれにも気づかずリベラーチェの思うままに人生を変えられていきます。全編に漂うスコットの白痴っぽさ、ダサさ、滑稽さがクールなのです。特にリベラーチェのペットになってからは、着せ替え人形のように悪趣味な服を着せられているのがダサ面白くて、股間に銀色のスパンコールのついた黒いビキニで怒るシーンはダサさがあまりにもさり気なくて見惚れてしまいました。

常にキラキラグリッターまみれの服を着せられ得意になっているなよっちい男の子の役を、あの爽やかマッチョガイのマット・デイモンが演じるのですよ! ギラギラ男だったダグラスのいかれクイーンよりもある意味衝撃です。そういう退廃的で浮足立った役からは一番遠いイメージです。

しかしね、マットさんは本当は、役の幅に限界がない役者なんですよ。朴訥とした好青年で冗談が分からなそうな感じですが、2008年にアメリカで大流行した動画『I’m f●ckign Matt Damon』を見ればイメージが激変するはずです。これは『ジミー・キンメル・ライブ』というコメディー番組で作られたもので、あまりにも人気が出すぎてアカデミー賞まで獲ってしまったという伝説のバカ動画であります。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。