第18回『白い巨塔(韓国版)』

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あの名作のリメイク版に見る従軍慰安婦問題のしくみ

今週でいよいよ最終回を迎えました、さよなら夏休み特別企画「日米韓No.1医療ドラマはどれだ?」。今週は医療ドラマ新興国・韓国のNo.1をご紹介します。やっぱりこの名前がついてれば自動的に首位に立ってしまいますね、『白い巨塔』(2007年・全20回)です!無条件に!!ということで、今週は原作・2003年唐沢版・韓国版を完全ネタバレでご紹介したいと思います。

 

山崎豊子が絶賛した、韓国版の「日本らしさ」

韓国のNo.1ドラマですが、本当は第9回でご紹介した『ゴールデンタイム』なんですよ、と『Dr.コトー診療所』に続き身も蓋もないことを言ってしまいましたが、そうは言っても『白い巨塔』は韓国における本格派医療ドラマの草分け。『白い巨塔』がなければ『ゴールデンタイム』という血みどろドラマも生まれなかったわけです。なので敬意を表する意味でも、最高傑作の栄冠を与えなくてはならない。

韓国版は私達が見慣れた唐沢版『白い巨塔』とは雰囲気がかなり違い、原作の世界観に忠実に作られたということです。「リメイク時に唐沢版のオリジナルストーリーを使ってはいけない」という契約上の縛りがあったため、唐沢版最高の見せ場、財前への告知シーンすら入っていません。「僕に不安はないよ。ただ…無念だ」というあの、号泣の名台詞も入れられない。てか告知そのものができない。現代のがん医療最前線で、末期のがん専門医が告知されないなんてありえませんよ!

唐沢版『白い巨塔』は圧倒的に面白かったけどもあれは『半沢直樹』と同じく日本離れしたど派手なテンションの高さが成せる技なんです。やたら濃い脇役陣とかね。西田敏行、高畑淳子、若村麻由美の異様な存在感たらない。若村麻由美は大入道みたいな新興宗教の教祖との入籍会見に次ぐいい仕事で、西田敏行のアドリブ放題もね、緊迫する法廷で、敵の弁護士に投げるヤジが「ヒゲ剃れや!」って、もう、なんだかよく分からない。韓国版だって派手にやろうと思ったらいくらでもできたんです。そういうのは韓国のお家芸ですし。しかし韓国で唐沢版くらいはっちゃけてしまうと山崎豊子らしさ、つまり日本らしさが出ない。そんな逆境のなか、原作の粘着感を巧みに再現し、一切の恋愛も排して作った「地味さ」「引き算の美学」には、韓国人が作ろうとした「日本らしさ」、山崎豊子や日本のドラマへのリスペクトが現れていて、本当に素晴らしい。制作陣のみなさん、ありがとう。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。