第18回『白い巨塔(韓国版)』

なぜ従軍慰安婦問題がここまでこじれるのか?

韓国版『白い巨塔』にはもうひとつ、大きな特徴があります。それは、韓国財前が悪に手を染める動機を強調してある点です。序盤の財前はそこまで傲慢キャラが目につく感じでもないのですが、教授からの度重なる侮辱があり、いかにも上流の教授と貧困からの成り上がり者である財前という構図も強調される。つまり韓国財前の出世欲は「権力者を見返す」という「絶対的理由」があるのです。韓国には「恨(はん)」という感情文化があると言いますが、韓国版『白い巨塔』に足されたもうひとつの要素がまさに「恨」だと私は思いました。とはいえ「山崎豊子の白い巨塔」を韓国でも受け入れやすくするために最小限韓国風に着色した要素なので、「恨」によってドラマの世界が崩されることは全くありませんでした。猛烈に自制が効いてました。そこも韓国版『白い巨塔』が素晴らしい理由です。

しかしこの「恨」は問題です。この難しい概念を言葉にすると「どうにも抗えない強大なものに潰される屈辱、悲しみ」「金や権力を持つものに踏みつけられる恨み」であり、そういう対象を激しく憎みつつも「自分もそうなりたい」と憧れる気持ち、のような感じでしょうか。韓国ドラマで主役が悪いやつである場合は、何らかの理由づけが必ずあります。アンチヒーローでなく「ほんとは犠牲者」という構図になっている。つまり悪いことしてても「悪くない」のです。誤解を恐れずに言うと、常に自己を正当化するマインドセットがそこにはある。で、現在リアル世界でその「恨」の対象となっているのが我が国日本であり、最も攻撃しやすい材料が従軍慰安婦問題となるのかな?餌を投げた朝日の国賊ぶりには感心するばかりです。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。