第10回『それでも、生きてゆく』

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男を溶かす「満島ひかり」の純情に、あなたは耐えられるか?

気づいたらこのレビューコラムのタイトルに「廃人」と付け加えられてました。他人に断言されると、凹みますね。親に申し訳ない気持ちで一杯です。そんな私が土下座して謝りたくなるくらい頑張って生きてるのが『それでも、生きてゆく』の主人公・遠山双葉ちゃん。満島ひかりが演じております。ということで、今週は2011年に全11回で放送された問題作を粛々とご紹介したいと思います。

視聴率1桁の最優秀ドラマ

このドラマは間違いなく日本ドラマ界が生み出した最高傑作のひとつなのですが、フジテレビでの放送時は平均視聴率9.25%。同クールで放送されたしょーもないドラマ『美男ですね』日本版にも劣る数字ですから、毎回涙に溺れながら観た私は歯ぎしりする思いでした。

敗因は、とにかくテーマが暗すぎたこと。主人公は中学生時代に妹を同級生の文哉(風間俊介)に撲殺されてしまった洋貴(瑛太)と、文哉の妹である双葉(満島ひかり)の2人。被害者である洋貴の家は一家離散、加害者家族の双葉一家は度重なる嫌がらせで職場や家を点々とし続けているのですが、社会の落伍者となってしまった2人がひょんなことから出会って、傷つけ合いながら少しずつお互いの立場を理解していくところに酒鬼薔薇君いや文哉が戻ってきて…という、本当に救われない話なので、はなから観る気も起きなかった視聴者が続出した模様です。3.11の年なので暗い話はなおさら避けられたのかもしれません。脱落せず観ていたわずかな友人も私と同じく、毎回観ては激しく落ち込むという有り様で、次回が気になるけど辛くて観るのが怖いという、まことに稀有な体験をしました。

しかし暗すぎるテーマを貫いたことは、このドラマの最もすごい点であります。結果、ギャラクシー賞2011年9月度月間賞、49回ギャラクシー賞選奨という最高の栄誉ほか、第70回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の最優秀作品賞他6部門を制すという偉業を成し遂げました。低視聴率ドラマがギャラクシー賞をとることはけっこうあるんです。専門家は通好みですからね。でもドラマアカデミー賞は一般視聴者からの評価がかなり影響するので、視聴率一桁で最優秀ドラマ賞に輝いたのは『それでも、生きてゆく』とクドカンの『マンハッタンラブストーリー』しかないんです。さらに!ギャラクシー賞とドラマアカデミー賞両方を受賞した視聴率一桁ドラマは、いまのところこの『それでも、生きてゆく』だけ。つまりこのドラマは、視聴者として肥えた目を持っているかどうかの試金石だ思っていただいて構いません。上段からばっさり、断言させていただきます。

松下祥子@猫手舎
WEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスや広告にこまごまと参加。得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、動物、昼寝などなど。