第40回『ハケンの品格 × オフィスの女王』

『ハケンの品格』はTEAM NACSのプロモーションドラマ

大泉洋&安田顕ファンの皆さん、お待たせしました。これよりTEAM NACS(てこんなの)タイムです!

ここまで長々と書いてきましたが、『ハケンの品格』は「大泉洋(以下大泉さん)を俳優として成功させるため」に作られたドラマなんです。

いまや結婚したい俳優No.1に輝く大泉さんですが、元々は俳優というよりローカルタレントとして、いや大泉洋という存在として愛されてきたわけで、東京進出当時、俳優と言っているけども演技のほうは正直言葉を濁すしかない感じなのに、なまじテレビ関係者(特にフジ)や役者、タレントに彼のファンが多かったものだから、やれ俳優でございなんていきなりゴールデンタイムでひっぱりだこ。当然どれもパッとしませんで、気の弱い大泉さんのおなかが現場でゆるくなりすぎてやしないか、ファンとしては粗相のほうを心配せずにはいられませんでした。

しかし『ハケンの品格』は違った。大泉さんが常にいじられてきた天然パーマという素材を、初めて違和感なくドラマで生かし切ってくれました。大げさすぎる芝居も、大泉さんを上回る小泉孝太郎の大根演技によって中和された。東海林武はまるで大泉さんの外見と演技レベルを見越して作られたオートクチュールのような役で、素晴らしい脚本や篠原涼子の達者な演技にも助けられ、やっと「俳優・大泉洋」と名乗っても恥ずかしくないぐらいにさせて頂いた。こんな演技下手で全国区で俳優なんてやっていけるのかしらとハラハラしていたファンもほっと胸をなでおろしました。そんな大泉さんの勇姿はこちら。

そしてもう1人、このドラマで真価を発揮したのが同じく水曜どうでしょう出身の安田顕。いまや名バイプレイヤーとして大泉さんより人気といっても過言じゃないです。派遣のマネージャー役でしたが、イケメンなのにモテ感が一切ない、腰の低いいい人キャラがこれ以上うまく出た役も、大泉さん同様なかったわけです。

当然韓国版でも、特に東海林の天パーは踏襲されました。そこがなければリメイクとはいえませんからね。しかしそもそも東海林役のオ・ジホは天パーが似合わない上に、韓国特有の「勝ち組が負け組をばかにする」設定もあってただの勘違い男にしか見えない。しかもオ・ジホは大根なので、韓国版は芸達者なイ・ヒジュン演じる里中と爆乳キム・ヘス演じる春子のドラマみたいになってしまってました。

他にも韓国特有の「貧乏人は有能」設定のせいで、韓国版の美雪が就職に全敗したのは地方大学卒のため、数々の仕事の失敗は金持ちのボンクラ社員をかばったため、とその後に続く成長要素が潰されたりして、日本版のような、すべてのキャラがきりっと絡んだキレのあるドラマとは違うものになってしまいました。韓国版に大泉さんとヤスケンが登場していればね、韓国の製作陣も、プロモーションとしての気合の入り方も違ったでしょうけどね……さすがにお茶の間に日本の役者を2人も出すわけにはいかなかったのかな。おしまい。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツの企画運営を始め、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、二度寝。