第40回『ハケンの品格 × オフィスの女王』

韓国でも悲劇が

『ハケンの品格』が放送された2007年、実は韓国でも非正規雇用者を巡る大変革が起こっていました。

当時、韓国では全労働者の半数以上が非正規雇用という驚くべき状態で、そんな状況を改善するため、2年以上継続して雇用した場合は無期限直接雇用に切りかえる「非正規雇用者関連法」が施行されたらしいんですね。したらあろうことか、該当する非正規の人を施行前にクビにする事態が続出。2013年に放送された韓国版『ハケンの品格』である『オフィスの女王』でもこのエピソードが出てきましてね、ドラマによると、デモ隊と武装警察の衝突とか、投石とか、ロックアウトとか、爆発とか、なんかもうえらいことになっちゃってて、さすが韓国。テンション高いわけです。

それはさておき遅ればせながらストーリーを紹介しますと、新卒採用で全敗した森美雪(加藤あい)(韓国版:チョン・ユミ)が派遣社員として潜り込んだ大手食品企業で、伝説のスーパー派遣・大前春子(篠原涼子)(韓国版:キム・ヘス)、派遣嫌いの出世頭・東海林武(大泉洋)(韓国版:オ・ジホ)、派遣養護派だけど頼りない上司・里中賢介(小泉孝太郎)(韓国版:イ・ヒジュン)らと出会い成長していく、という、わりとありきたりなお話です。

大前春子の派遣期間は3ヶ月のみ、契約更新、残業、契約書に書いた以外の業務は一切なしという高飛車な契約ながら、事務作業だけでなく助産師から核燃料取扱主任者まである膨大な資格を使ってどんな難題も完璧にこなします。

韓国版も驚くほど『ハケンの品格』とおんなじなんです。各セットの雰囲気も同じ、細部のセリフまで同じ。なんならカメラワークまで同じだったりと、よくぞここまでオリジナル版を引きついだまま成功したなと感心しました。ですけどね……なぜか韓国で日本のドラマを忠実にリメイクすると、キレのないぼんやりした話になってしまう。とはいえ日本要素を活かして個性的なドラマにもしたい。そのために『オフィスの女王』が取った秘策は、韓流のお約束の「肝だけを」投入したことでした。

そんな『オフィスの女王』の雰囲気がわかる予告編、貼っときますね。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツの企画運営を始め、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、二度寝。