第39回『おやじの背中』

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おやじを巡る稀代の変態作!?

夏ですね。暑いですね。東京は毎日オーブンのなかみたいです。お天道様が出ない日は今度は湿度が高くて、どっちにしろ不快。その夏真っ盛りを横断するように放送されたドラマフェス、覚えてる方いるかな?今からちょうど一年前。視聴率では惨敗しちゃったけど夏にかぶせるような暑苦しさをお茶の間に届けたTBS日曜劇場の意欲作『おやじの背中』(2014年/全10回)を、汗を拭き拭きご紹介したいと思います。エアコン強にしてお読みください。

 

そうそうたる脚本家の、そうそうたる自爆

2014年夏期のドラマといったら、勝敗の差がこれほどあからさまに出たのも見たことがないというぐらいでした。ぶっちぎりの1位は月9に戻ってきたキムタクヒット作『HERO』。元々ファンが多いしキムタクの代表作だし、平均21.27%もうなずけます。次が日本版マミーポルノと言っても過言ではなかった話題作『昼顔~平日午後3時の恋人たち』。本レビューでも過去最長ボリュームでご紹介しましたが、こちらは尻上がりで数字を伸ばして平均13.9%。その他10%台に乗った3作以外は皆一桁。その下位レースのなかでは『おやじの背中』は9.43ですからね、悪くないとも言えなくもなかった。もう一歩で二桁だったし。瑛太、妻夫木聡、満島ひかり、柄本佑と今が旬の俳優をずらりと並べて『北の国から』の杉田成道が撮った『若者たち2014』よりはマシだった。けども、日本を代表する一流脚本家と豪華出演陣がオムニバスでしのぎを削るなんてすごい企画で9.7%はちょっと。なんて随分揶揄されました。

1番数字がよかったのは初回で、『最後から二番目の恋』や現在絶好調の『ど根性ガエル』の脚本家、岡田惠和による「圭さんと瞳子さん」なんだけどこれが、おやじと言いつついきなりの父と娘。田村正和と松たか子が奏でるねっとりとした背徳感満載のストーリーに、日曜夜のお茶の間がドン引き。15%という好スタートを暗転させました。その後も坂元裕二、山田太一、倉本聰、鎌田敏夫、木皿泉、井上由美子に三谷幸喜まで、名前を見るだけでワクワクするような脚本家を揃えたんですけどね、圭さんと瞳子さんが爆破した門を再建できる人は、誰もいませんでしたねえ…。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。