第31回『北の国から 83′ 冬~ 2002 遺言』

純の髪はいつ膨らんだのか?

吉岡秀隆病の皆さん、待ちに待った「荒ぶる髪」タイムです!『北の国から』はいわば、秀隆スタイルの創世記。彼のまことにナイーブな、舌たらずな魅力を存分に表現するためには、あの豊かすぎる髪の始末を抜きにしては語れないのです。

『北の国から』の純のモテっぷりには驚くべきものがあります。しかもモテに理由がないところがすごい。女と目があった瞬間に、向こうからグイグイやってくる。中3の時のレイちゃんなんていきなり下着姿だし、次のヤンキーエリ(洞口依子)からは逆レイプ、タマコなんてラブホに自分から誘っちゃいますからね。シュウは出会い直後からの密着プレイ、しかもここまでレイちゃんと二股という鬼畜っぷり。人妻・結は目が合うなり舌なめずりです。異様なまでにモテフェロモンが出てます。そのくせ妙に奥手で20才まで童貞、しかし卒業するなりセフレを作って妊娠させるなんて、草食の皮を被ったとんだ肉食です。ラブホという避妊具が常備されている環境でということは使い果たしたってことなのか、一体一度に何回なさったのか、AV女優だったシュウとはどんな惨事が繰り広げられたのか。結と結婚まで何もなかったなんてとても信じられません。

しかし私は発見しました。このモテっぷり、いやドラマの命運は、髪の総量と相関関係にあるのです。まずモテとは無縁だった連続ドラマ時から83’冬まで。正吉の股間に生えた一本に大騒ぎしていた頃までは、しっかりお豆ちゃんヘアーでした。それが急にふんわりしてきたのがレイちゃん半裸の回。ヤンキーエリ、タマコの時代が全盛期、雰囲気ある奔放さです。シュウで若干荒ぶりますが、ここは胸はだけすぎの着こなしで辛くも色気のバランスを堅持。そして荒ぶりに乗っ取られたのがラスト2回です。この丸さ、やりっぱなしの毛量は、シーズービション・フリーゼマエストロ征爾しか許されない域です。この時純君が髪の荒ぶりを制御できていれば、今頃まだ純の女癖の悪さはパワー全開で、まだ『北の国から』も顕在だったかもしれないなあ……。

21年の長きに渡った富良野負け犬物語は、吉岡氏の髪にかけられた呪いで終焉を迎えた。それが『北の国から』コンプリートで得た最大の気づきでした。先ほど螢がサイコーってのが最大の発見と書きましたが、やっぱり男はヘアスタイルって大事ねってことのほうが重大でした。アラフォーニートの方々も、床屋にだけは定期的に行きましょうね。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツの企画運営を始め、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、二度寝な