第19回『猫侍』

猫はたまに犬より役に立つ

全シリーズ「かわいい動物と男」というセットで人気のこの動物シリーズのなかでも、『猫侍』はタイトルとジャケで8割がた勝ってます。侍て言ってもただの侍じゃないですよ。浪人ですからね!月代に裃姿よりもずっと荒々しいわけです。その懐から白猫ちゃんがチラリと顔を覗かせている。これって着崩れた浪人風の着付けだからこそできる技なんですね。主演が北村一輝というのもね、動物シリーズの歴代おっさん主役のなかで最もアクが強いのにキマってる。『ねこタクシー』のカンニング竹山は余裕でスルーでも、これはもう、抗えないでしょう。猫とセットになった浪人姿の北村一輝がこれほど美しいとは。いまや私のなかで抱かれたい男No.1です。

『猫侍』のジャケの魅力は「どんなマッチョな男も猫と一緒だとほのぼのして見える」という事実を端的に表していることだと思うんです。小林まことの『ホワッツマイケル?』のネタにもありましたね、猫を飼ってることを必死に隠し続けているヤクザの話が。事実こんなのとか、こんなのとか、こんなのとか、こんなのとか、こんなのとか、何故かみな裸ですけど、だからこそほのぼのします。この通り、着衣をぎりぎり保った男に対する猫の怒りは相当ですよ。猫男=ゲイという図式も侮れないです。北村一輝もサービスカットあるのかなあとか観てる間じゅうワクワク夢気分でした(ゲイの噂もあるしね)。このようにしてね、猫はこの世の空き家ボボ女全体の欲求不満解消に一役買い、不信のテレビ業界にまで救いの手を差し伸べたのです。犬には絶対真似できない技であります。犬と男だと「よく働きそう」としか思わないし、ムラムラ解消という意味では実際にAVに出てくるのは犬だけどもその「働かされてる感」が悲哀を誘うし。『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』は奇跡的に犬が魅力的に見える番組でしたけど、あれは犬が素の犬コロだったからです。幼児の顔を噛んだハスキー犬がお仕置きのブレインバスターを食らってからの橇犬としての大成(こちら動画)とか、衝撃と感動で号泣でしたよ。甘っちょろい動物愛護精神あふれる今となっては、あんな犬番組はもう現れないでしょう。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。