第19回『猫侍』

猫じゃなくて北村一輝を楽しむドラマ

『猫侍』の主人公である斑目久太郎は、無双一刀流免許皆伝の剣豪。加賀藩の剣術指南役だった頃には「まだら鬼」の異名でその強さを讃えられていましたが、このドラマはそんな久太郎が「猫侍」へと変貌していく様を描いた物語なんです。故あって浪人となった久太郎は士官の口を探すも全然うまくいかない。生活は困窮し、家族とも断絶しているけど、プライドが邪魔して武道以外の職に手を出すこともできない。そんな時になりゆきで「玉之丞」という白猫と暮らすことになるのですが、たまちゃんは隙あらばざるに入ってとぐろを巻くざる猫で、たまに耳を平たくしてバフンウニみたいな顔をする。その猫を、ふとした拍子に懐へ入れ、ノミ退治のためシャンプーしてやり、猫ごはんを手作りし、猫を養うために傘張りを始め、猫に話しかけ、「そうだにゃー」と猫語を使い、最終的にはチューまでするようになっていく。たまちゃんと一緒にいるうちに、久太郎は侍であることよりも大切なこと、自然体で生きることを学んでいくのです。猫の怠惰には嘘がない。そんな真っ直ぐな生き様が、頑なだったまだら鬼の心を解きほぐすというわけです(解きほぐされてる時に出る歌はコチラ)。ゆるドラマ一直線かとおもいきや、意外に後半シリアスになっていくのも好感が持てます。マニア以外でも楽しめるまともなドラマです。

ドラマのキーとなる久太郎の変貌は、ひとえに北村一輝の変貌に支えられているといっても過言ではないのです。実際「北村一輝ってこんなに男前だったっけ?」と驚きながら拝見しました。今まではルックス的には微妙な役者だった気がします。バットマンのジョーカーみたいというか。悪役じゃなくて「不気味な役」をやるために生まれてきたような顔です。初めてみたのは「奇跡の人」という山崎まさよし主演のドラマで、ゲイ寄りの両刀使いである人格障害な悪役でした。ホットパンツ履いてても面白いより気持ち悪さが勝ってた、そんな役者だったはずなのに今回に関してはジャケで一目惚れするぐらいかっこよかったのは何故なのか?と考えましたら北村さん、笑わないんですね。久太郎の「常に怖い顔」という設定によって、ことさら不気味だった笑顔が封印されたのがほんとによかった。顰め面だと普通に男前であるとは存じ上げませんでした。こいつがせっせと猫の世話をやいてたりすると、つぎにどんなデレ姿が出てくるか期待感が高まるわけです。期待感といえば久太郎のご近所さん役で出ている平田薫という女優は、『自縄自縛の私』という映画で全裸&亀甲縛りファックという体当たり演技(サービス画像ですよ)を見せてくれたので、今回も久太郎と何かあるのかな?と若干期待しましたけども、そういうのを挟む隙はなく、猫ドラマにエロは似合わないんだなと痛感いたしました。痛々しいエロは犬に任せとけという話みたいです。さて、疲れたのでAVでも見て寝るかな。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。