VOL.6 高ければ何でも売れる? 中国人富裕層相手のビジネスに「秘訣」はあるか?

※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』へ、当サイト管理人の野田道貴が寄稿したものを転載しています

前回の記事でご紹介した、上海発・京都花見ツアーですが、4泊5日で25万円程度という高額な設定にも関わらず、リリース早々に申し込みが殺到したそうです。参加した人たちの満足度は非常に高かったとのことで、高付加価値型の訪日旅行商品は、たとえ少々高くても内容が良ければやはり売れる、という事例のひとつだと思います。

このツアーには、夕食を含めフリーの時間が用意されていましたから、彼らの実際の消費額は相当なものだったと推測されます。購買力のある彼らのことですから、高額のお土産を購入したことは想像に難くありません。

もうひとつ、別の例を挙げましょう。4月5〜7日に三連休がありました。筆者は、沖縄でゴルフをしたいという中国人の知人に頼まれて、コースや宿泊の手配を手伝いました。彼らは、旅行会社がパッケージで売るツアーに飽き足らず、旅行の内容は自分たちでいいと思うものを選びたいという層。そんな彼らからのオーダーは「野田さんがいいと思うところを選んでよ」というものだけでした。

「予算は?」と聞いても「すべて任せるから、自分でも行きたい思うところを選んでほしい」と言います。そんな漠然としたオーダーは掴み所がなくて面倒なのですが、彼らが価格のことを本当に気にしていないのを知っているので、良かれと思うところを好きなように組ませていただきました。

これは商売ではないので、知人としてあくまで無償で手配をお手伝いしたわけですが、その御礼として、上海に戻った後彼はすぐに、筆者をゴルフに招待してくれました。土産話を聞いた限り、満足してくれたようで何よりです。

ムダに高いばかりではダメ
中国人は何を期待しているのか

この2つの旅行には、共通するポイントがあります。前者は、旅行雑誌に対する高いブランドロイヤルティであり、後者は(日本人である)筆者に対しての信頼とでも言いましょうか。つまり、自分が信じているものに対しては支出を惜しまないという点。そこに確かな付加価値が見いだせるならば、費用をかけることに躊躇はしないというスタンスです。

筆者が直接関わった沖縄の例でいえば、彼らのオーダーには大切なヒントがいくつか隠されています。まず「完全に内容は任せる」という点。これは中国人と親しくなるとよくあることですが、おまえのことを信頼しているから頼むぞ、という証です。その前提で、「自分で行くなら」という尺度での判断を求めています。

筆者のセレクトを信頼してくれている、ということではありますが、ヘタな内容の紹介はできないというプレッシャーを、当然背負わされることになります。自分だったらその金額を払う妥当性があると思うか? という基準での判断が要求されているのですから、慎重にならざるを得ません。

彼らは金額を気にしていない、と言いましたが、いくら高くてもOKだというわけでは決してありません。支払いに見合った内容がなければ絶対に満足はしてくれないでしょう。つまり、重要なのはコストパフォーマンスです。気候のいい時季の3連休ですから、旅行商品は繁忙期扱いの割高な設定になっています。そこで、ムダに高い商品をつかんでしまうことを、彼らは決して良しとしません。日本人である筆者に旅行の手配を頼むことで、よりよい経験と満足を効率よく得たい。もしそれを叶えてくれたなら、それ相応の報酬はきちんと払う(今回は、ゴルフに招待してくれました)。極めて合理的な思考プロセスに基づいての行為なのです。

ちなみに、彼らが沖縄へ行くのは今回が初めてではありませんでした。それどころか、滞在型のリゾートに泊まってラウンドをしたことが何度もあるそうです。つまり彼らは沖縄のことをそれなりに知っているはずなのです。さらに言えば、そのうちの一人はかなり流暢な日本語を話すので、ゴルフも宿泊も自分で手配をしようと思えば苦労せずにできたことでしょう。それなのに、筆者にアドバイスを求め、手配を依頼しました。

ただ面倒だから、ということではないはずです。彼らにとって、その方が結果的にいい旅ができるはずだ、という判断だったからに他なりません。このことは、今回の旅行の手配のみならず、中国人を相手にビジネスをするうえでのヒントが隠れていると思われます。

中国人との宴席にこそチャンス有り?▶

クラブユーフォ!管理人・野田道貴
一季出版: 『月刊ゴルフマネジメント』(毎月15日発売)ほか、ゴルフ業界誌や専門書を出版。 http://www.ikki-web.com ※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』への寄稿を転載したものです