※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』へ、当サイト管理人の野田道貴が寄稿したものを転載しています
いろいろと課題の多い中国のゴルフ環境と、何だかんだと言ったところでゴルフ先進国である日本。その両国間のギャップにこそ、さまざまなビジネスチャンスが潜んでいるはずです。
少なくともそう考えてはいるものの、半信半疑の部分もあることは、この連載で繰り返し延べてきました。この国のゴルフがブレークするのはいつなのか? そもそも、本当にブレークするのだろうか? そんな疑念を常に頭の片隅に抱えつつ、一体何が中国人ゴルファーに刺さるのか、日々思考をめぐらせているわけです。
そんななかで、いまいちばん確実性が高いのではないか、と考えているのが、「ゴルフ旅行」というテーマです。中国人ゴルファー=「富裕層」という捉え方をするならば、すなわち海外へ自由に出かけていける人たちです。彼らに対し、日本へゴルフをしに来てもらうアプローチをどう仕掛けていけばいいのか。
今回はそのあたりのお話です。
不自由な中国のパスポート
海外旅行へはビザ取得が必須
東京をはじめ都市部はもとより、最近では地方の観光地でも中国人旅行者を見かけることは珍しくなくなりました。大型連休にこぞって日本を訪れる中国人の動向は、報道でもたびたび取り上げられています。「春節」や「国慶節」など、かつては馴染みのなかったはずのことばも、中国人旅行者の定着にともなって、日本でも広まってきているように思えます。中国人は、いとも簡単に日本にやって来ている。そう思える状況かもしれませんが、実際にはそんなことはありません。
冒頭で「海外へ自由に出かけていける人たち」と書きましたが、日本人にはいまいちしっくりこない感覚かもしれません。日本人は誰でも、中国にビザなしで入国することができます。それどころか、日本のパスポートの自由度は世界トップクラスであり、170の国にノービザで入国することができます。「ヘンリー&パートナーズ」の調査によれば、これは世界4位にランクされます(※注)。片や中国のパスポートでは、ビザなしで入国できるのはわずか44カ国のみ。これは主要国としてはダントツで低い数値であり、アジアの中でもインドやベトナムを下回っています。
※注)最新の2014年版の調査では、日本からノービザ訪問できる国は172カ国になっており、世界3位にあたる(中国は45カ国で83位)
つまり、中国のパスポートは非常に自由度が低い。もちろん、訪日にもビザが必要です。海外に行きたければ、まずビザを取得しなくてはいけないのです。パスポートとクレジットカードさえあれば、大抵の国へは自由に行けてしまう「強い権利」を生まれながらにして持っている日本人にはどうしても感覚がつかみづらいのですが、海外旅行への障壁はビザに強く影響されるものです。訪日する中国人旅行者が増えているということは、ややこしい手続きを踏んでビザを取得した人がそれだけいる、ということなのです。