VOL.6 高ければ何でも売れる? 中国人富裕層相手のビジネスに「秘訣」はあるか?

コネ社会=信頼関係の構築
ビジネスのヒントはあるか

日中間の、政治をめぐる摩擦のことは、ここでは置いておきます。そのうえで、今回例示したような層の中国人たちは、日本(人)というものに対しある種の信頼感を抱いています。自然が美しく、文化的に豊かであり、人が成熟している国が日本である。そう思い、心から日本に憧れている中国人は、決して少なくありません。

だからこそ、日本の象徴である桜を観賞する旅行商品には惜しげもなく高額を払うし、日本人の知人の紹介するコースならば間違いがないだろうと、自分がよく知っている土地に出かけて行くにも関わらず、あえて行程の設計を頼むのです。こういった心理は、日本人であろうが中国人であろうが、あまり変わりはないものかもしれません。ただし、中国人なりの姿勢というものもあることを、知っておいて損はないと思います。

中国は「コネ社会」である、というような噂を聞いたことがあるかもしれません。社会のルールより、コネが重視される世界。不合理極まりないようでいて、「内」と「外」がハッキリしていると考えれば、そこにはヒントも見え隠れしています。

コネがある、ということは、その人にとって「身内である」と認識されているということです。中国人は、結束が強いといわれます。世界中のどの国でも、華僑はチャイナタウンを作りますが、彼らは仲間同士固まって、お互いを守り合っているのです。そのベースは、法やルールというよりも、「身内としての信頼関係」があるかどうか、ということにあります。中国は法治国家ではなく、人治国家である、などと揶揄されることがありますが、彼らの考え方の根底に、人間同士の信頼関係を何より重視する姿勢が横たわっているのです。

宴席の乾杯を侮ることなかれ
中国人の信頼を得る絶好のチャンス!?

だからこそ中国人は、一緒に食事をすることを重要視します。ビジネスミーティングには、宴席がセットされます。そこでは乾杯がつきものですが、乾杯をして一緒に酒を酌み交わすことで、相手と親密になろうとします。たかが宴席と侮ることなかれ、この機会に腹を割ってコミュニケーションができる相手なのかどうか、つまりは身内として認めるのか、あるいは外の人間として距離を置くのかを判断するのです。

身内の人間であれば、徹底的に信頼する。一度信頼したものに対しては、ロイヤルティを崩さない。ある意味で、非常にシンプルな理屈です。大切なのは、それが表面的な付き合いではなく、深いところでつながれているかどうか。何よりも結束に重きを置く彼らを相手にビジネスをするということは、言い換えればどうやって信頼を勝ち得るか、にかかっています。

今回の例でいえば、旅行雑誌に対する揺るぎない信頼があるから、そこが紹介する商品ならば間違いないだろうと、高額でも売れ行きは好調でした。沖縄ゴルフの手配は、信頼している人間だから、しっかりとやってくれるという前提で依頼がきました。中国人の富裕層たちは、確かにお金を持っていますし、その使い方も尋常ではありません。ただし、むやみやたらに浪費しているわけでなく、ある一定の判断基準を持っているということです。ただ高い商品を売りつけようとしても、決して触手を動かさないのです。このことは、中国人ゴルファーを日本に呼び込む際の、大きなヒントになると思いませんか?

クラブユーフォ!管理人・野田道貴
一季出版: 『月刊ゴルフマネジメント』(毎月15日発売)ほか、ゴルフ業界誌や専門書を出版。 http://www.ikki-web.com ※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』への寄稿を転載したものです