第33回『ザ・オフィス』

『東京都北区赤羽』と共通するもの

ちらっと触れましたがこのドラマ、ずーっとハンディーカメラ撮影なんですよ。オフィスの様子を撮影してドキュメンタリーを製作中という設定なんです。

前クールにコアなドラマファンをどよめかせてた不思議ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』、皆さんご覧になりましたでしょうか?山田孝之が突如自分探しを始めて、「赤羽に答えがあるかも」と強引に移住してしまうあれです。

こちら予告編

赤羽の素人さんが一杯出てくるので、ドラマなのかドキュメンタリーなのか観る者の心を常に不安にさせたんですが、このドラマが秀逸な「モキュメンタリー」であったことは間違いありません。そして今週ピックアップした『ザ・オフィス』の面白さもまた、モキュメンタリーの手法を使っているところにあるのです。

モキュメンタリーとは「モック(擬似)」「ドキュメンタリー」を合体させた造語で、つまりドキュメンタリー仕立てのフィクションのこと。最も有名なモキュメンタリーといえば皆さんご存知のホラー映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』です。全編にわたってチープな素人用ハンディーカメラ撮影で、揺れまくる画面が逆に怖いというやつです。『ザ・オフィス』はブレアウィッチや北区赤羽よりもドラマ要素が強いので、はっきりドラマと分かっているからこその、演出としての「不安定さ」が際立つのです。

このドラマでは、登場人物が全てドキュメンタリーの出演者なんですね。なので支社長のマイケルは必要以上にカメラを意識して空回りし、しかしカメラは社内で密やかに繰り広げられる三角関係ばかり追っていたりする。合間合間に社員が別室へ呼ばれ、カメラの前で一人インタビューに答えたり。その外面と本音のギャップが生々しく、今までみたことのないような臨場感を生むんです。画面では痛々しいまでの緊迫が続くのですが、だからこそ合間合間に挟まれるバカバカしい展開に爆笑するのですよ。第一話のキーワードは「そろそろドワイトのものをゼリーにするのはやめろ!」です。分かってますよ、聞いてませんよね。フフフ…

松下祥子@猫手舎