第27回『11人もいる!』

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私はクドカンに関してはかなりのファンを自認しておりまして、その出会いは彼の大人計画でのメインデビュー作「ナオミの夢」(1996)まで遡ります。といっても舞台はあまり好きにはなれず、あくまで大人計画作品の一部として見ていただけでしたが、ドラマがね。初の連続ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』はほんとに衝撃でした。以来ずっとファンでですね、ほぼ見てきました。この「ぼぼ」というのは、テレ朝の2作が未見だったからです。今回は、そのうちのひとつ『11人もいる!』(2013年/全9回)についにトライ!あくまで個人的感想ベースでご紹介したいと思います。

 

TBSではないということ

このドラマがテレ朝制作であることは冒頭でも書きましたが、実はクドカンドラマでTBSではない局が制作したドラマは5つ、半数以下なんです。ひとつは皆さんご存知、NHK制作の大ヒット作『あまちゃん』。ご存知すぎるんでリンクも貼りません。もうひとつは、レアなんで逆に知られているかもしれないフジ制作の『ロケット・ボーイ』。主演の織田裕二が入院したため、途中休止のうえ話数短縮になった不運の作品です。3つ目は日テレの『ぼくの魔法使い』。隠れた名作との呼び声も(私の中で)高く、伊藤英明と篠原涼子という天然役者2人を据えたテンションの高い作品でした。で、あとの2作がテレ朝深夜枠。地味です。『11人もいる!』の前、2008年に深田恭子主演で放送された『未来講師めぐる』は、『トリック』や『特命係長 只野仁』『時効刑事』を生み出した伝統の金曜ナイトドラマ枠にあってもそう悪くはない数字で、エロ度がちょっと高かったのかな?未見なので良くわからないのですが。

で、今回の『11人もいる!』が、私が観る初めてのクドカン@テレ朝だったんですね。で、これは個人的感想ですが、観てる間じゅう、こう、「うーーーーん……」と。変な唸り声が止まらないというか。面白くないわけじゃないんですが、誰のドラマを観てるか分からない感じで。河原雅彦が脚本だ!と言われたら腑に落ちる感じで、河原にしちゃよくやったじゃないかと。河原雅彦は「小劇場界の加藤鷹」と(私に)呼ばれ、宮藤官九郎とともに90年代の小劇場を賑わせたパフォーマーの一人であります。といっても常に河原さんがクドカンの後を追っていて、ドラマの作風も似ているけどクドカンには全然届かないという、個人的には残念な脚本家なのです。代表作は上戸彩主演なのに超低視聴率で打ち切りとなった『下北サンデーズ』で、今クールはテレ東のドラマ24枠で『玉川区役所 of the dead』を放映中。ともさかりえの元夫としても有名です。

『11人もいる!』が演出陣含め純然たるクドカンドラマでありながら醸しだす「秀逸な河原作品臭」は一体どこから来ているのか?ほんとに、面白くないわけじゃないんです。マニアの間での評判も、賛否両論ありながらも概ね好評でした。でも代表作とは決定的に違う。それはやはり、TBS制作ではないこと、つまり磯山晶プロデューサーとの作品ではないことが影響しているとしか思えないのです(磯山Pは、クドカンを一流脚本家に押し上げた立役者であります)。

ということで、クドカン磯山Pらしさが炸裂している『うぬぼれ刑事』のバカダンスシーンを貼っときますね。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、二度寝などなど。