第25回『最高の離婚』

『昼顔』に学べ!『最高の離婚』が提案する『結婚できない男』の身の処し方とは?

このドラマの第一話をご覧になった方、「あれ?」と思った方もいるはずです。光生が仕事から家に帰る場面、目黒川にかかる橋の縁の上を中途半端に乗って歩くシーン。あれあれ?これはまさに『結婚できない男』こと桑野信介さんのお家芸ではないですか!しかも、彼が歩くのも目黒川にかかる橋。「面倒くさくて女性に疎まれる、家事能力の高い几帳面男」という設定も、酷似してますよ!『最高の離婚』は、坂元裕二が設定を考える上で、『結婚できない男』をオマージュとして踏襲しつつ、坂元裕二らしい意地悪さをてんこ盛りにして、『結婚できない男』が描いた「2人で生きていくという選択」に対する答えをドラマにしたのではないかと、私はそう考えました。どうでしょうね??

※『結婚できない男』ってどんな話だったかな?と振り返りたい方はこちらからどうぞ

(ここから最終回などのネタバレしますんで要注意)

この話、光生と結夏夫婦の話のように見えますが、実は本筋はそっちじゃなく「光生と灯里(真木よう子)の恋愛物語」だったんじゃないのかなと私は思うんです。光生と灯里は学生時代に同棲していて、相性も全然悪くない。なので物語は光生と灯里が再会して、少しずつ誤解を解いて、また縁を戻そうとする方向に進んでいく。灯里とそのままうまく行っていれば、光生は結夏とよりを戻したのかどうか。その疑問にはドラマは敢えて答えないままです。つまり、坂元裕二は光生と灯里の恋愛物語との対比で「結婚とは何か」を炙り出そうとしたのかなと。

夫婦ものといったら『昼顔ー平日午後3時の恋人たち』で、上戸彩扮する紗和が面白いことを言っていました。北野先生との関係がうまくいかず夫に八つ当たりするシーンで

「あたる相手がいてよかった。夫婦の存在価値なんて、案外そんなものなのかも」

と。深いです。夫婦は恋愛感情が失せてしまった後でも生活の余白を埋めるためにお互いが大変役に立つ。そしてどんなに好き合って結婚しても、放っておけばそのうちお互い間詰め剤になる。やはり会えば喧嘩している桑野信介と早坂先生の間にも、きっと光生と結夏と同じ未来が待っているわけです。

そこで出てくるのが最高の離婚』というタイトルの意味です。坂元裕二は、実は『昼顔』の井上由美子と同じことを『最高の離婚』というタイトルに込めたのではないか?つまり

「究極の恋=破綻に終わる恋」=「最高の離婚=結婚生活に恋愛を取り戻すための破綻」

てことなんじゃないかな?と考えてみると、純粋に恋愛であった灯里と光生が成就しなかった理由も、2014年に放送されたスペシャル版でもやはり光生と結夏が別れるという結末にも納得がいくのです。実際結夏はいつも好きなのに別れを切り出し、それに引きずられて光生の気持ちが戻るわけですし。

離婚と再婚をうまいこと繰り返せば、一生ひとりの相手と恋愛していられる。そんなとこなんでしょうか。『昼顔』みたいに警察が介入するぐらいの修羅場を経験しなくても「プチ昼顔」なドキドキ感が楽しめる、それが『最高の離婚』であり、坂元裕二が桑野&早坂カップルに助言したかった「夫婦長続きのコツ」だったのかもしれないなーなんて、すっかり枯れ果てた夫婦生活を送っている私は思いました。もっとそういうの、早く教えてくださいよ。せめて夫婦のどっちかに恋愛感情が残っているうちに。

※おまけ
夫婦長続きの秘訣をじっくり確認したい方は、今のところこちらから全編ご覧いただけます。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。