第23回『北の国から』

黒板純=吉岡秀隆はここから始まった

吉岡秀隆といえばいまだに「純君」を思い出す、そのくらいこの黒板純という役は大きかったわけですが、幼き日のひでたか君にはそれが重荷でしかなかったといいます。でもそれも仕方ない。そのくらいファーストのひでたか君は、素晴らしい!!!全24回のドラマのなかで、役者として見違えるほどの成長を見せてくれます。安達祐実とか、芦田愛菜とか、天才子役として一世を風靡した子は一杯いますけど、鼻で笑いたくなりますよ。この、11歳のひでたか君の伸びしろを見たら。

絶妙なタイミングで入る「拝啓」の一言に喜怒哀楽を表現してみせるモノローグがたまらないんですが、注目は第一回のこのシーン(電気がない!)。原野でテンパってるおしゃべりな都会っ子、黒板純が生まれた瞬間です。このお豆みたいな顔から繰り出される激切れ敬語は単に面白い以上の意味があって、その後もこの父子はずっと敬語なんですね。それが蛍との間にはない溝を表していて、21年間も続いていく父と子の物語の記念すべきスタートであるのです。

その前年に公開された健さんの映画『遙かなる山の呼び声』でのひでたか君と、たった1年しか違わないのに演技のキレが全然違うのにも注目です(詳細検討したい方のためにフルムービーも)。同じ北海道での撮影なのに、この短い期間に何が彼を変えたのか?そのひとつの要因は、ひでたか君自身が『北の国から』の過酷な撮影環境に追い込まれていたのもありそうです。その後に続く蛍との喧嘩シーンでのキレっぷりは鋭さを増す一方で、蛍を演じた朋子ちゃんが心配になるくらいでした。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。