第14回『ハウス・オブ・カード 野望の階段』

日本で政治ドラマが流行らないワケ

どうして日本にはこの手の「本格派政治劇」が少ないのだろうと考えてみました。想定視聴者層はアメリカとは多分違いますね。日本は「ドラマを見るのは女子供だろう」という前提で作ってますから、ストーリーも登場人物も女性向けかファミリー向け。なので主役が男の場合はだいたい若いのです。現在放送中であるプライムタイムの連続ドラマを眺めてみると、男性主人公のキャスティングは小泉孝太郎、木村拓哉、柳葉敏郎、AKIRA(EXILEの人)、藤原竜也、妻夫木聡、玉森裕太、山田涼介。オーバー50はギバちゃんの孤軍奮闘です。

有名脚本家と大物俳優の1話完結オリジナルドラマで話題のTBS『おやじの背中』は珍しく主役が大物シニア俳優揃いなのですが、「ハウス・オブ・カード」と同じく大物の本物感がウリながら視聴率は続落中。倉本聰西田敏行なんて絶対失敗は許されないカードで8.5%ですから目も当てられません。大物を本気で使おうとした時に出てきたテーマがね、パパってのがね……第一回は田村正和と松たか子が父娘2人きりで疑似夫婦みたいに暮らしてる話だったんですが。正直こんなのお茶の間で見ていいのかな?と当惑するぐらい近親相姦的だったんです。そこ本物感出しちゃってどうすんだってとこで本物感ですよ。おやじの背中っつーか娘の背中にバックハグですからね。パパとJKが偶然2人でこれ見てたら気まずいことこの上ないですよ。そこにママがいたら空気が剃刀みたいにとがっちゃうでしょう。第二回の父娘は我らが満島ひかりちゃんと役所広司。こちらはもっとやばいです。田村パパは娘を最後涙ながらに手放しましたが、役所パパはなんと、結婚式直前に「略奪」しちゃいました。田村家のママは早くに死んだんですが、役所家は父娘がひっつきすぎて母が家を出ましたから。よくこんな危険な話をお茶の間にぶっこんだなと。ドラマのTBS、視聴率下落も辞さないお茶の間破壊。脱帽です。

こんな火薬庫に足を突っ込まなくても、TBSはあらゆるドラマの常識に逆行した『半沢直樹』(『24』みたいでしたネ)で歴史的大ヒットを飛ばしたわけですから、「ハウス・オブ・カード」のような大物感のあるドラマを作れる下地はあるはずなんです。なのにはなから作れる気がしない。これは一体何故だろうと考えたら、本格的な政治もの、経済ものにジャニーズが主役で入る余地がないこと以外ないんですよ、理由が。実際どのタイミングでドラマのラインナップを眺めてみても、独自のおじさん路線を貫いているテレビ朝日を除くどの局も、いつでもジャニーズが入れるような脚本でスタンバイしてるようにしか見えません。こうなったらいっそ、童顔ながら政界でド派手などんでん返し劇を繰り返した鈴木宗男先生役を大野君で!ぐらいの気概で、ジャニーさんの側から大人子供な異形感と本気で対峙していただくよりほかない気がします。

「ハウス・オブ・カード」で米国ドラマ界に華麗に参戦したNetflixは、次作の女子刑務所を舞台にしたブラックコメディー『Orange is the new black』も大成功。日本ではまだ未公開ながらすでに前評判が大変高いんです。こういうの、日本でも観てみたいなー果たして泉ピン子以外の女囚主人公を日本のドラマで見る日なんて来るのでしょうか?期待は薄めでしかし諦めず朗報を寝て待つことにします。

追記:散々褒めた「ハウス・オブ・カード」ですけども、シーズン1唯一のエロ要員の肩透かし感はどうなのかなあ。子供の使いじゃないんだから、もっとそそる娘脱がせなさいよ!

松下祥子@猫手舎
WEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスや広告にこまごまと参加。得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。