※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』へ、当サイト管理人の野田道貴が寄稿したものを転載しています
月刊ゴルフマネジメント読者のみなさん、はじめまして。中国・上海在住の野田道貴と申します。この地に移り住んで約7年、現在は中国ゴルフビジネスという得体の知れないマーケットの開拓に取り組んでいます。今月より当誌にて連載をさせていただくことになりました。中国ゴルフの「現場感」をタイムリーにお伝えしていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
在留邦人5万7千人
500人規模の日本人コンペ
さて、本連載では中国ゴルフマーケット=中国人のゴルフ動向について考察していくつもりですが、その前に少しばかり、上海に暮らしている我々日本人のゴルフ事情についてお話をしておきたいと思います。というのも、日本人である筆者が上海という異国に暮らし、ゴルフビジネスをしている理由がそこにはあるからです。
上海は、日本人の長期滞在者数が世界でいちばん多い都市です。外務省の統計資料によると、平成24年10月現在で5万7千人以上の日本人が上海で暮らしています。現地には、在留邦人向けの飲食店や住宅、サービス施設などが充実しており、おそらく日本人がこれほど不便を感じずに暮らせる外国の都市は他にありません。たとえ中国語ができなくとも、日本人社会の中で生きていく限りにおいては、さして不自由なく生活していくことができます。たいていのことは、日本語で済んでしまう環境が揃っているからです。
それはゴルフにおいても当てはまり、たとえば弊社では、日本語で『ゴルフトゥデイ』の最新情報を盛り込んだ雑誌を発行しているほか、提携ゴルフ場の予約サービスを日本語で提供しています。いくつかのゴルフ場には、日本人、もしくは日本語が話せる担当者が常駐しており、ことばが不自由であっても安心してプレーできる環境がここにはあります。
娯楽の限られる海外生活においては、ゴルフの果たす役割は極めて重要なものになります。プライベートなラウンドはもちろん、仕事絡みのコンべから、県人会・OB会などのコミュニティ活動まで、日本人同士のコミュニケーションツールとして、ゴルフは日本以上に不可欠なものになっているからです。たとえば、毎年開催される「全国大学対抗コンペ」という、出身大学別のOB会による団体戦があります。2013年の大会には500名を超える参加者が集まりました。おそらく、世界でも類を見ない規模の日本人コンペだと思われますが、大なり小なり、週末毎に各コースでは日本人同士がプレーを楽しんでいる姿を目にすることになります。
弊社が上海ゴルフビジネスをはじめたのも、これほど日本人が濃密にゴルフに没頭している環境なのに、雑誌のひとつもないのは寂しいじゃないか、と考えたのがひとつのきっかけです。登録在留者だけで5万人を超え、出張べースの短期滞在者も含めると、常時10万人以上の日本人がいるとされる上海においては、そのほとんどが現役のビジネスマン(とその家族)ですから、ゴルファーの比率も高くなります。正確なデータを取っている訳ではありませんが、弊社の推計では3万人程度の日本人ゴルファーが上海にはいるのではないかと踏んでいます。
そして、ここでは一般の会社勤めをしながらも、年間50ラウンド、100ラウンドをこなす日本人が珍しくないのです。仮に3万人の日本人ゴルファーの年間平均ラウンド数が20回だとすると、上海の日本人だけで60万ラウンドをこなしていることになります。決して小さい数字ではないことがおわかりいただけるかと思います。