第23回『北の国から』

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雄大な富良野の景色をバックに贈る、大自然負け犬物語

皆さん日本を代表するドラマと言われたら何を思い浮かべますか?私は『北の国から』は外せないと思うのですが、ネットをさらってみると意外にお声がかかってない。不思議ですね、成人している日本人で『北の国から』を知らない人はいないと思うんですがね。しかし話をしっかり覚えているかといわれると?長すぎて内容の記憶が漠然としちゃってるせいなのかな??

ということで、今週は名作おさらい企画。21年にわたって続いた『北の国から』シリーズのなかから、1981年-82年に放送された、このドラマの幕開け部分をご紹介いたしたいと思います。

 

日本版『大草原の小さな家』はこうなった

『北の国から』の初期シリーズというと、富良野、田中邦衛&吉岡秀隆&中嶋朋子、倉本聰、さだまさし、キタキツネ、「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」っていう印象でしょうか?他に思い出そうとしても、特に連続ドラマ部(以下ファースト)に関してはあまり記憶がないという方が大半ではないでしょうか。

倉本聰のオリジナルドラマという印象があまりにも強い『北の国から』ですが、Wikipediaによると意外にも、先行するヒット作の「二匹目のどじょう」を狙うといった側面があったようなんです。70年代後半に大ヒットした『キタキツネ物語』『アドベンチャーファミリー』を受け、日本版『大草原の小さな家』を目指したと。『アドベンチャーファミリー』は憧れたなあ!雄大なロッキー山脈で、子グマを飼ったりして、そのうちグリズリーまで友だちになりますからね。当時はムツゴロウ王国にもヒグマのドンベエというスター羆がおり、大人になったらクマと暮らすんだ!と期待に胸踊らせていたんですが、まさかね…クマが基本人を襲うものだなんて、知らないものこっちは。九州生まれなんで、山にクマなんていないし。三毛別羆事件とか(詳細はコチラ)福大ワンゲル部ヒグマ襲撃事件(その詳細もコチラ)なんて事実をね、先に知らせないと、子供(私)の教育によくないわけですよ!21世紀の今、テレビ番組から「クマは友だち」というメッセージがほぼ消えたのは正しい判断だと思います。

で、日本版『大草原の小さな家』がコンセプトだというフジテレビの依頼を受けて倉本聰はどうしたか?ここからが倉本氏の素晴らしいところだとつくづく思うのですが、高度経済成長の成熟期にあった80年代の日本で家族が大草原に小さな家を作って暮らすというのはどういうことなのかを、つきつめて考えていったんだと思います。その答えは「登り調子の時代にそれをやるのはよほどの変わり者、もしくは都会の生活に絶望している者、つまり負け犬しかいない」。倉本氏はきっとそう読んだのです。まさに黒板五郎のキャラクターです。そこに対峙するのは、東京っ子で父の行動に適応できない息子の純、五郎が東京に決定的に絶望するきっかけを作った妻の令子。令子は東京の象徴なんです。この着想がなければ、その後21年に渡る成功はなかったわけです。

松下祥子@猫手舎
ほぼWEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスのブランディングや広告にこまごまと参加。執筆の得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。