※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』へ、当サイト管理人の野田道貴が寄稿したものを転載しています
中国人富裕層にとって、それを購入するかどうかの判断基準は価格の高低にあるのではなく、いかに高い付加価値を感じられるかどうかにかかっている、というのが前回のお話でした。プレミアムな何かを得られるのであれば、それに対しては高値を払うことに躊躇はしない。ただし、ただ単に高いだけのものは見向きもされないというのが、中国人富裕層に見受けられるひとつの傾向だと言っていいでしょう。
だからこそ彼らは、その特別な情報を入手するためのルートを大切にします。彼らは、有益な情報を集めることに対して非常に貪欲です。自分が知っている世界以上に、より広く深い情報を取り入れることを常に意識しています。そんな中国人富裕層にとって、日本のゴルフというのはまだまだほとんど知られていないというのが実状でしょう。とはいえ、彼らの間でも日本のゴルフは少しずつ注目され始めてはいるようです。それを踏まえ、日本のゴルフの何が中国人富裕層たちに刺さるのか。今回はその考察を深めてみたいと思います。
日本のゴルフを楽しみたい
中国人富裕層のゴルフ志向
知人の中国人に沖縄ゴルフの手配を頼まれた経緯を前回お話しました。価格やコースのタイプの希望を聞いてはみたものの、「任せる」という答えが返ってきたのみ。そこには、「お金は気にしない。条件に合うところで一番いい体験がしたい」というメッセージが言外に込められていました。
市内からタクシー移動ができる範囲内で、海が見えるコースをセッティングしたのですが、結果的には非常に気に入ってもらえたようでした。プレー中には、海辺のホールから写真を送ってきてくれましたし、コースのノベルティをお土産に買ってきてくれました。満足してもらえたのかな、という手応えはありました。
具体的に何が気に入ったのか、後日一緒にラウンドをしながら聞いてみたところ、帰って来た答えは意外なものでした。「一緒に回った人たちがとても素晴らしかった」というのです。彼らは2サムでエントリーをしており、場合によっては他のペアと組合せになる、ということは事前に知らせていました。意外なことに彼らは、実はそれを楽しみにしていたそうなのです。男性2人でただプレーするだけでは、いつもの上海のゴルフとあまり変わらない。どうせなら旅先で、知らない日本人と一緒にゴルフがしてみたかった、と言われたときにはなるほど、そういう考え方もあるのかと思いました。
中国では、原則4サムだろうが2サムだろうがプレー料金は変わりません。また、他のパーティと組合わされるということはまずありません。つまり、誰か知らない人と一緒にラウンドをするという習慣自体がないのです。メンバーコースにひとりで行った場合でも、そのままキャディを携えてひとりでラウンドすることも多いくらいですから、コースで出会った人とラウンドをするような機会があること自体が、ひとつの楽しみになっているということは大きな気づきでした。もっとも、今回のように日本語を話せる人間に限り、ということだとは思いますが。