地名が通称になっているのは
古くから愛されてきた証拠
上海近郊でゴルフ場の建設が始まったのは1990年代から。第一号は上海カントリー(青浦)で、「嘉定」は“第二世代”に当たるとされる。そもそも、「青浦、嘉定」と地名で称されるほど、当時はまだゴルフ場が少なかった。故に、所在地がそのまま通称となったのだろう。
中国ゴルフの黎明期に作られたコースは、どこでもほぼ設計段階から日系が関与している。「嘉定」も例外ではなく、将来的に中国人ゴルファーが来場することを見据えていたであろうとはいえ、開業当時はほぼ日本人のための施設だった。上海経験が長いゴルファーには、「癒しの嘉定」というフレーズは耳慣れたものかもしれないが、要するに日本人たちの憩いの場所として、このコースは大きな役割を果たしてきたのだ。いまとは比べものにならないほど、中国でのビジネスや暮らしが厳しかった時代、ゴルフ場こそが、在留邦人にとっての数少ない娯楽の場であり続けたということだろう。
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「癒しの嘉定」では果たして
本当に癒されるのか?
「コースが簡単で好スコアが出やすい」から「癒し」なのだという説もあるが、筆者はそれには与しない。確かに、全体的にフラットで、グリーン周りにはしっかりと花道が用意されている設計は、フロントから回ればさほど苦労をさせられることはないかもしれない。しかし、後ろから回るならば、途端にシビアなコースへと姿を変える。
たとえば、ブルーティからならば399ヤードの3番ミドル。ティショットである程度距離を稼いでおきたいところだが、引っかけ=即OBなので叩きに行くには勇気がいる。右サイドには巨大なバンカーが、そして池が配されているので逃げ場はない。ドライバーを遠くまでまっすぐに打つ技術が厳格に求められる。癒しを期待してここを訪ねても、癒される暇なんて、実は案外ないものなのだと心得ておいた方がいい。