自分自身を知れ

ゴルフの上達への近道、それは「自分自身を知る」ということ。ゴルファーのほとんどが、自分自身の力量を正確に認識していないと中部はいう。「十のうち八までが自分の力を過大に、二が過小に評価している」 過大も過小も上達を阻む要素であることは同じである。自分自身の力量とは、ショットの正確度であり、飛距離である。自分のドライバーショットが平均何ヤード飛び、フェアウェイを何割キープできているか? 7番アイアンはキャリーで何ヤード飛び、ランがどれだけあるか?

これを把握できている人は驚くほど少ない。これができていなければ、ゲーム設計なんてできっこない。ある人が7番アイアンを持ったから自分も…なんて考え違いもいいところ。その人がどういう意図でそのクラブを選んだのか不明ではないか。自分の7番アイアンのキャリーとランの距離と正確性を把握してはじめて、ゲームの設計はできるものなのだ。

プレイヤーか、マネージャーか

中国に駐在される多くの方が、管理職もしくは経営陣として着任されます。日本では生産を担当していた、マーケティングをしていた、営業をしていたという方が、中国赴任後はいきなり数百人規模の工場を管理する、また総経理として100人の社員の管理監督し経営を行わなければならないといったケースは多々あります。 これまでの業務経験にはない、経営や統括業務において力を発揮しなければならない局面で、自らがプレイヤーとして最前線で活躍しようとしてばかりしていては現地化も進まず人も育ちません。 実績を生み出すためには、自らが動かざるを得ないと思われても、リーダーシップを発揮してマネジメントに徹し、現地の社員と共に事業の目的を遂行して行かなければならないという難しい局面に中国では立たされるのです。

「中国のことをわかっていない」

日本での成功体験や経験を押しつけると、現地社員からの反発を受けます。中国(人)を深く理解しないままに業務を進めると、思わぬ落とし穴に陥ることもあります。 中国ならではの考え方や価値観を理解するのは大前提ですが、誰もが最初から理解できているわけではありません。それなのに中国人社員から「あなたは国情を理解してない」「中国のことをわかってない」と言われてしまうと思わずひるんでしまい、仕事の本質そのものを伝えられないストレスを感じている方も多いのではないでしょうか。

自分自身を分析するところから

思うように業務を進められないストレスを抱えたままでは「いい仕事」はできません。 本来ならば中国への赴任前、あるいは赴任直後でもいいので、これまで自らが経験し積み上げて来たノウハウやナレッジを一度きれいに整理してみることです。自分の強みと弱みについて、徹底的に再検証・再確認してみてはいかがでしょうか? これまでのビジネス経験の棚卸しをし、自分が一番能力を発揮してきた場面はどのようなシーンで、自分は何を得意としているのか?また、自分が不得意で失敗してきたのはどのような場面で、それをどう克服してきたのか? 自分自身の強み/弱みを改めて把握することによって、言動が変わってくるはずです。成功体験の押しつけは反発を招くだけですが、強みを知ることで揺るぎない自信とストーリーを中国人社員に教え伝えるのは必要なことです。あるいは弱みを認めることによって、現地社員にサポートをお願いできるはずです。 原則や本質をまっすぐ伝えていくためには、まずは自分自身のあるがままの姿を正しく知ることが先決です。伝えるべきは伝え、譲るべき所は譲る。感情的な押しつけや頭からの否定は、何もプラスになりません。中国は難しいとイライラする前に、まずは自分自身を知る所からスタートしてはいかがでしょうか?

 

参考文献:中部銀次郎 ゴルフの心(杉山通敬著・日経ビジネス人文庫)

中部銀次郎とは:前人未踏・日本アマ6回優勝という金字塔を打ち立て「プロより強い」と評されながらも生涯アマチュアを貫き通した伝説のゴルファー。その徹底したアマチュアイズムとストイックな姿勢には、多くの教訓が今も残る。2001年没。

金鋭(きん・えい)/ 英創アンカーコンサルティング総経理
1989年リクルート入社後、一貫してヒューマンリソースビジネスに従事。1999年、インテリジェンス中国の前身である上海創価諮詢に経営参画。日本育ちの華僑3世。