「第三次性徴期」という新たな提案
このドラマ、学園モノですから当然「青春モノ」でもあるわけです。思春期の果てなきムラムラと女子のもったいぶった戸惑いのミスマッチも当然描かれますが、『ごめんね青春!』が新しかったのは、青春がとっくに終わった世代の思春期が再燃するところ、そこに流行りの童貞だけでなく「処女」が入ってくるところ、というかそっちがメインになっているところ、なんですね。第二次性徴期が終わって青春期の門を叩いた初々しい生徒たちに対して、不器用をこじらせて無様ですらある大人たちの迷走ぶりは、第三次性徴期もしくは大人の思春期という感じでしょうかね。つまり、学園を舞台にした「先生たちのワクテカ物語」なんです。
主人公の国語教師・原平助(錦戸亮)の、ジャニーズでありながらの童貞くささこそが、この物語で昇華されるべき1番の問題であるわけです。彼は東高生時代に初恋相手の三女生・ゆうこ(波留)を親友のサトシ(永山絢斗)に奪われ火事を起こしてしまった過去を乗り越えられずにいる。今でも気持ちは童貞のあの頃のままなのですね。平助がいまだ体も当時のままかどうかはさておき、ゆうこの妹である処女教師りさと出会うことで、彼の「童貞時代」も動き出すわけですよ。
処女パートを受け持つのもやっぱり教師たち。第一回で「先生は処女です!」と言い放つ英語教師の蜂矢りさ(満島ひかり)、推定処女のどんまい先生(坂井真紀)、そしてカトリックの尼僧である三女の吉井校長(斉藤由貴)のお三方がその大役を担っています。特に現オーバー40で唯一信仰と関係なく処女であるらしいどんまい先生が巻き込まれるえなりかずきとの「大人の恋愛」は、遅れてきた思春期そのもの、痛々しくもテッカテカです。
このドラマ、特に処女くささの描き方が見事でしてね。「ハートのつり革を同時に掴んだ相手と結ばれる」なんて中学生みたいな伝説を、大人の処女だからこそ完璧に信じちゃってる蜂矢りさとかね。「鼻の頭が割れてたら処女じゃない」なんて生徒にからかわれて狼狽する若き日のどんまい先生とかね。童貞のダサさを描く物語は溢れかえっているけど、処女のダサさを描く物語は、地味に斬新なんです。あまり見かけない、秀逸な設定なんです!
対して「汚れちまった大人」パートを演じるのは、平助の兄・一平(えなりかずき)。元グラビアアイドルのエレナっちょ(例の堀越出身のね)を妻に娶っていたりと、インパクトと異彩ではこのドラマで群を抜いていました。どんまい先生を壁ドンで追い込んで保健室であぶないことをしてしまう回なんて、新生えなりかずき!といった迫力でしたよ。多分、とんでもない暴れん坊をお持ちなんでしょうね……エレナっちょを一週間に3回しか抱かないってだけで「セックスレス!」と泣かれてしまうぐらいですからね。こんなのやっぱり日曜劇場じゃ無理ですよ!!
そんな大人の恋愛もありつつ、やっぱり洗練とは無縁の童貞&処女の物語なところが愛しいんです。共学への憧れ、先生への恋、絡まる三角関係、友との別れ、文化祭、深夜ラジオ。多分今の高校生のリアルとはかけ離れてるんでしょうが、ファンタジーがね。月曜を前にささくれだった気持ちを落ち着かせてくれる。と考えるとやっぱり日曜劇場にはピッタリの内容、なんですかね逆に?