アメリカのドラマの持つ魅力と欠点
このドラマはほんとに、登場する患者が毎回不憫でならないんですが、よく見てるとハウス先生は全ての患者にそっけないわけじゃない。たまーーーに、人情のようなものを見せるのです。そういう回はね、不憫さの反動もついてもう、号泣です。特に子供が絡む回はやばいです。
1話完結で同じような奇病発見ストーリーが繰り返されるなかで、極悪主人公にちらりと人間味が見えたりするのはドラマのエッセンスといいますか、緩急をつけるうえで最も簡単かつ重要なやり方です。キャラクターの深みも出るし、物語の深みにもつながるし。しかしこれ、諸刃の剣でもあるんです。それはアメリカのドラマならではの、ある特性のせいなのですが。
アメリカのドラマは人気が出ると延々とシーズンが続いていきますよね。これが難問なんです。大体シーズン2ぐらいまではどのヒットドラマもクオリティーが高いまま続けられます。が、そこから先はグダグダな未来が待っています。特にこのドラマのように、1話完結の病名発見ミステリーみたいな感じだと、毎回ストーリーの流れが決まってくるので2シーズンもやれば飽々してくる。そこで次に持ちだされるのが、主要メンバーの個人的なエピソードつまり最初は「深み」になっていた部分です。いずれ恋愛問題へと発展し、ドロドロになり、変な事故とかありえない事件とか、最初がどんな話だったか分からなくなってきた頃にやっと終了。皆同じような道をたどると書くとまるで韓国ドラマみたいですが、それがアメリカのドラマの現状なのです。
さらに人気作品になると、キャストと制作側の衝突もドラマのクオリティーへの障害になります。ギャラで揉めたりいろいろですが、途中でキャストがバンバン降板して、そのつじつま合わせでドラマが迷走していく。やはり大人気の医療モノ『グレイズアナトミー』も降板ラッシュでドラマが大混乱しました。
『Dr.HOUSE』も途中から、病院経営での政治的な動き、ハウス先生のジャンキー問題、恋愛のゴタゴタなどで少しずつ毛色が変わってきます。それは別にいいのですが、アメリカのドラマの典型的な盛衰を見てるようで悲しくもあるんですね。しかしシーズン7から最終シーズンへの流れはなかなか秀逸なトンデモ展開で、これは是非とも観てほしいです。少なくともこのドラマは、視聴率低迷でいきなりぶつ切りのまま終了とはならなかったので、そこは安心して鑑賞できることだけは保証いたします。全8シーズンの陰気な長丁場を楽しみつつ、皆様くれぐれもお体ご自愛ください。