第13回『みんな!エスパーだよ!』

「青春の夢に忠実であれ」by シラー!

ドラマの冒頭に出てくる言葉ですが、胸が熱くなります。夢をなくしてしまったからじゃありません。青春の夢が概して「モテたい」とか「好かれたい」とかいう頭の悪そうなもので、しかもそれが本当に大切であったということが愛おしいからです。それが完璧にダダもれで、バカを隠す術すら知らなかったあの頃……。涙で目が霞んだところに、着崩してもない制服が着崩れちゃってる嘉朗が、腑抜けた顔して現れるのです。彼が救いたいのは世界なのか?浅見さんか?それとも自分なのか?世界の何を救うのかも判然としないまま勢い込む嘉朗の痛ましさは、男性陣の嵐のような共感を(夏帆のパンチラもあいまって)呼びました。

しかしストーリーは最終回に近づくにつれ迷走していきます。3回に分けて放送された最終章は脚本・監督ともに園子温御大。さすが暴れん坊監督、ドラマの文法を完璧に捨てちゃってます。9回までの展開ならば、その先は「嘉朗は美由紀と浅見さんどっちを選ぶのか?」とかそういう方に行くはずが、蓋を開けてみたら予想もつかないというか予想を拒絶する展開で、特に最終回放送後の怒号はすごかった。ムラムラしながらドラマを追っていたイタ視聴者の皆さんの期待をぶん投げてしまいましたから。

最終章3回は、テレビドラマではなく完全に園子温ワールドでした。それがいいかどうかはさておき、第10話ラストで浅見さん(真野恵里菜)がやおら「仰げば尊し」を歌い出し「私」と書いた大旗を持って商店街を走るシーンは、真野恵里菜の奇跡の音痴っぷりもあって観る者の不安を掻き立て、とても園子温らしいシーンではあったけど「ああ、ドラマじゃなくなっちゃった」と呆れ返るような、逆に興奮するような変な気分になりました。このシーンで脱落した視聴者も多数いたようです。最終回はやりすぎ感が鼻につきましたけど、でも私はこの最終回でよかったと思います。テレ東深夜で園子温がメガホンを取るという意味をきちんと見せていただけました。素晴らしかった。

そもそも何があってもこのドラマはTENGAがあるから大丈夫なのです。どんな暴投も聖母マリアのような慈悲深い心で受け止めるTENGAさんの懐の深さたるやすごいものです。だから皆さんは安心して、

「声なき声響かしてこうぜ Power to the people  沈黙をぶっ壊してやろうぜ」

と歌う主題歌のごとく、イケてる男子の影に隠れて教室で沈黙していた思春期の自分に戻ってください。自分に超能力があって、皆に「すげー」とか言われて、好きなあの子を華麗に救って「好き♡」とか言われる自分を夢想していた、あの頃へ。

松下祥子@猫手舎
WEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスや広告にこまごまと参加。得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。