第13回『みんな!エスパーだよ!』

若杉公徳園子温染谷将太=TENGA!

稀代のサイキック童貞コメディーである『みんな!エスパーだよ!』の底力は、『デトロイト・メタル・シティ』(以下DMC)の若杉公徳の作品であることからも伺えます。なんてったって、童貞イタ男子を描かせれば世界屈指の鬼才ですからね。DMCではおしゃれ渋谷系ミュージシャンになりたいのにどうしてもデスメタルの才能が開花してしまう悲しい童貞君を描きましたが、今回は超能力を使ってヒーローになろうとする高校生の話。さすが鬼才、どっちもナイス・イタボーイです。

「みんな!」はエロの見せ方もスマートでした。舞い踊る大量の「男の夢」TENGA、ヤンキーの大量パンチラにおっさん童貞のカクカクし続ける腰など、ひたすらアホらしいエロに愛らしい三河弁が乗っかることで、作品全体がまろやかに、温かい雰囲気になるわけです。全編三河弁、オール東三河ロケというのもこのドラマを際立たせる味となっています。

そんな演出&脚本のメインが園子温であることも見逃せない。映画好きなら誰でも知ってる暴れん坊監督です。『SRサイタマノラッパー』で頭角を表した異色監督、入江悠も参加してます。低予算枠であるドラマ24がクリエイターからどれほどの支持を集めているか、人気のほどが知れるというものです。

園子温は『ヒミズ』で染谷将太君にヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(なんかすごい賞)をもたらしたんですが、染谷君はヒミズより圧倒的に「みんな!」の嘉朗がよい。憂いを帯びた独特のおしゃれっぽさを封印し、ダサくてイタかわいい嘉朗として七転八倒してくれました。ハイキックパンチラが冴え渡った夏帆も清純派を微塵も感じさせないヤンキーだったし、謎の教授役の安田顕も本来の「知恵足らずのイケメン」キャラを存分に発揮。『水曜どうでしょう』以降、これほど安田顕らしさを発揮できた作品はなかったです。一番どぎついエロだった「難しいことを語りながら爆乳助手の胸を揉みしだく」シーンを爽やかに演じ切りました。そしてお笑い芸人のマキタスポーツこのドラマの真の主役と言われるくらいの人気でした。流暢な三河弁と落ち着きのない腰は、染谷君の「机を持ち上げる勃起」、夏帆の「ハイキックパンツ」と並ぶこのドラマの看板シーンであります。

松下祥子@猫手舎
WEB専業コピーライター兼ライター。大手検索サイトでのWEBマガジン立ち上げを経て独立、ポータルサイトでのコミックレビューコンテンツをはじめ、WEBサービスや広告にこまごまと参加。得意分野は映画、ドラマ、本、旅行、オカルト、犬、昼寝などなど。