行き場のない童貞パワーと中2病に突き動かされる高校生の青春物語だよ!
「このドラマは、若きエスパーたちが正義と性への憧れの狭間で苦悩し、成長する物語である」
そんな一文から始まるこちらの作品、ほんとにこの通りの内容なんですが、先に煽っときますと「テレ東の深夜ドラマながら第51回ギャラクシー賞奨励賞(ドすごめの賞)を受賞した作品」です。そんな御大層な『みんな!エスパーだよ!』(2013年/全12回)を、これ以上ないくらいの童貞礼賛でご紹介したいと思います。わっしょい。
世界は僕が救うんだ!
舞台は愛知県の東三河高校。平凡で地味な高校生である嘉郎(染谷将太)は、ある日他人の心の声が聞こえることに気づきます。毎日激しい勃起に悩まされるものの童貞卒業どころか大好きな浅見さん(夏野恵里菜)に話しかけることすらできない嘉朗は、自分が得た能力で皆が羨む「ヒーロー」になれると確信。同じくエスパーとして開眼した幼なじみのヤンキー・美由紀(夏帆)や行きつけの喫茶店のマスター・テルさん(マキタスポーツ)らを集めて、ヒーローになるべく世界を救おうとする物語―
あらすじとしてはこんなところです。極めて痛々しいです。エロ満タンの高校生がエスパーになって世界を救うって、高校生なのに中二病かよと。しかもこの能力、ある月夜の晩のあるタイミングでエクスタシー状態にあった性交渉未経験者のみがゲットできた超能力なのです。つまりオナニーばっかしてたってことですね。
しかしね、あまたある青春物語のなかで、童貞君の話ほど愛おしいストーリーなんてないんです。彼らはどこまでも報われず、衝動も葛藤も自分の内側に閉じ込めておくしかない。ひたすら悶々とする毎日です。田舎の一本道を「僕が、世界を、救うんだああああ!」と絶叫しながら激走する嘉朗の真意は当然「浅見さんと、付き合いたぁぁぁい!」なのですが、続くオープニングで高橋優の「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」をあえてギター1本でかき鳴らしてみせる荒々しさに、童貞君の切ないまでの性(生)への渇望を魅せつけられたようで、見ているこちらは動悸に襲われるような感動に打ち震えるわけです。
男性諸氏はよく思い返してみてほしい。思春期まっさかりの童貞時代、女の子なんて自分の世界にはいなかった頃以上に、自分の内側から突き上げる純粋な衝動を抱えていた時代なんてあったでしょうか?バカで、みっともなくて、オナニーばっかりしてて、だからこそしゃせ、いや生きることに真剣だったあの頃。世の中にはいくつか極めて秀逸な「男子が主人公の青春譚」(最近だと有名な『桐島、部活やめるってよ』なんか)がありますけれど、そこで必ず描かれるのはこの「童貞=モテない君の苦悩」問題。正直少女漫画の世界でよくあるような、擦れた高校生のチャラい恋愛なんて腐れフィクションですよ。乳繰り合ったら意味がないんです。あるのは勃起「だけ」、テント張ったパンツはあってもそれより先には一向に進めないジレンマ。そこに本物の、ダサ美しいドラマがあるのです。