第1回『DOCTORS 最強の名医』

私生活のスキャンダル生かし
強烈キャラを怪演した高嶋政伸

桜の季節も遠い彼方、先取り5月病で家事もさぼりがちの皆様ごきげんいかがでしょうか? 本日より皆様に斜め斬りのドラマレビューをお届けいたします、猫手舎と申します。半分寝たきりでテレビと共に過ごして早○十年。私を見て「こんなドラマばっかり見てる人より私のほうがずっとまし」と思っていただけるよう努力する所存です。よろしくおねがいいたします。

さて連載初回にご紹介しますのは、沢村一樹主演『DOCTORS 最強の名医』。現在2シーズン放映済みのテレ朝ドラマで、特にシーズン2は平均視聴率18.3%も獲った人気作。のはずですが、半沢直樹とあまちゃんの大ブームに押された上に、直後に同じくテレ朝の米倉涼子主演『ドクターX』が大当たりしたことも災いし、なんとなく陰が薄くなった気の毒な作品です。しかし侮るなかれ、主演の派手さでは負けるものの、DOCTORSもなかなかに手堅い佳作なのです。

経営もうまくいかず医師の志も低いお粗末な民間病院に、ある日新しい医師がやってくる。その医師は笑顔の裏で策略をめぐらし、理想の病院を作るためひたすら我が道を突き進む。そんなダークヒーローを演じる沢村一樹が出色なのです。サラリーマンNEOのセクシー部長からこっち、エロだセクハラだと迷走して一時はどうなるかと案じましたが、大胆な策略も爽やかな笑顔で押し通してしまう今回の役柄は見事にハマりました。理想のためなら女心も利用しつくす腹黒さもさらりとこなせるのは、モデルで培われた笑顔の賜物でしょうか。沢村一樹は大根役者と見まごうほど淡白な演技をする人ですが、『DOCTORS』の相良浩介は浅見光彦シリーズに続く当たり役です。

そしてこのドラマの敵キャラを演じた高嶋政伸。視聴率の半分は彼が持ってきたと言われるくらいの怪演、ドロ沼スキャンダルで地に堕ちたイメージがハマりにハマって度肝を抜かれました。彼の以前の代表作といったら『HOTEL』ですが、好青年を演じるわりに爽やかとは言いがたい違和感が当時から異彩を放っていました。このままでは二時間ドラマから時代劇の舞台役者への凋落が目に見えるようでしたが、少々頭のおかしいストーカー妻のおかげで個性的すぎる素顔が世に知れ渡ったのが功を奏しました。今回、傲慢で道徳心のかけらもない上に幼稚な御曹司医師という役柄を得て、捨て身の演技とストレス太りした容貌もあいまって、これ以上ない強烈なキャラが出来上がったことは、美元ありがとう!と何度お礼を言っても足りないくらいです。主人公にコケにされ踏みつけられるごとに、不思議に愛らしくなっていく繊細な演技も見もの。とにかく高嶋政伸はすごい役者です。この才能、多くの人に観ていただきたい。

脚本の福田靖は『海猿』や『龍馬伝』『ガリレオ』が代表作。特にガリレオは好視聴率の一方でずさんなトリックやご都合主義の展開に批判が集まったりもしましたが、今回も最前線で頑張る医療従事者や患者さんを愚弄するかのような都合のよすぎる展開がちらほら。しかし、そんなことがどうでもよくなるほどの痛快さ。春疲れのこの時期にぴったりな、清々しい安定感のある良作です。

しかし高島さん、ここまでハマるキモキャラをやってしまって不気味なイメージが定着してしまわないか、他人ごとながら心配です。同じく沢村さんも、このドラマでの新境地に乗っかったフジテレビに、2作品連続で黒っぽい主役を与えられての連続惨敗中。やっと陽の目を見たテレ朝での偉業を潰されないか胸が痛みます。グッドラック。


DOCTORS 最強の名医』(テレビ朝日系列)

松下祥子(猫手舎)
WEB専業コピーライター兼ライター。幼少時からテレビを友達として育つ。韓国文化ファン歴は11年。得意分野はテレビ番組、旅行、映画、書評、宗教、オカルト、動物。