VOL.9 巨大な中国人海外旅行市場に、訪日ゴルフ誘致で参戦を

安くて豊かな日本のゴルフ環境
ショッピングも魅力的

日本の冷えたゴルフマーケットを再び熱くするために、さまざまな議論が繰り広げられています。若年層の拡大が最重要課題なのでしょうが、その層の掘り起こしには時間がかかります。もちろん、将来的なプレイヤーを育てていかなければならないのは自明ですが、手っ取り早くゴルフ市場を活性化させるには、海外からの誘客が最右翼でしょう。中国人は、その絶好のターゲットです。

ここで、中国人に狙いを定めるべきなのには、いくつかの理由があります。まず1つ目が、ゴルフ環境の日中格差です。中国には、あの広大な領土にわずか450程度のコースしか存在しません。そしてこれらのコースは、以前この連載でも取り上げたように高額なメンバーシップコースです。地域によって差はあるものの、上海エリアであれば、平日のビジタープレーで1万2,000円、土日であれば2万円程度がプレー費の相場です。日本と比べても、決して安くないのがわかるでしょう。

中には土日で4万円近いコースもあり、いくら富裕層が対象であるとはいえ、割高感があるのは否めません。我々日本人にとっては言わずもがな、このままでは気軽にゴルフができなくなると危惧をしています。これらが、決して環境の整った素晴らしいコースかと言うと決してそうではなく、不当に高い設定の場所が少なくありません。また、人件費含め、コース運営にかかる費用を考えれば、今後もまだまだ中国のプレー費は高騰が続くというのが大方の予想です。

一方日本では、探せばコストパフォーマンスの高いコースはいくらでも見つかります。たとえば上海から直行便が飛んでいる九州エリアでオンライン予約の検索をしてみると、平日で3,000円台、土日でも5,000円程度でプレーできるコースがたくさん見つかります。上海ならば、練習場1回の料金とさほど変わらないな、という感覚ですから、この金額は大きなメリットです(日本人から見ても魅力ですが)。

具体的なケースを、空港からアクセスのいいコースも多い鹿児島で考えてみましょう。たとえば温泉旅館に宿泊しての2泊3ラウンドという行程を組んだ場合、往復の航空券代を含めても、上海の高級コースで週末に2ラウンドするのとさして変わらないコストで「海外ゴルフ」が実現できそうです。飛行時間は1時間半程度ですから、移動のストレスもたいして苦にはなりません。

中国人の訪日ゴルフを促進すべき2つめの理由は、ショッピング需要です。中国人旅行者が日本に行く最大の目的のひとつは買い物であり、豊富な品揃えと高い人民元が組み合わさって、現在の日本は買い物天国になっています。かつて円高の時代に、日本人がこぞってハワイや香港に出かけていたように、中国人たちはショッピングのために日本を訪れています。時計や宝飾品、ブランド製品や家電など、彼らが狙っているものは様々ですが、ゴルフ用品にもニーズがありそうです。

まず品揃えの点。北京や上海には大型のゴルフ量販店はあるものの、日本に比べればその品揃えには雲泥の差があります。上海には日系店舗も進出してはいますが、日本の売場を知っている目の肥えた中国人ゴルファーからすれば物足りないのは明らかで、彼らは日本でまとめ買いをすることも珍しくありません。特にウェアや小物類にその傾向が顕著に見られます。

そして価格面。中国に入ってくる輸入品には高額な税が課せられるため、たとえ同じ品物であっても日本と中国では2倍近い価格差があります。場合によっては、わざわざ飛行機に乗ってでも日本に買いに来た方が安い、ということもあり得ます。高額な用品を買うような場合であれば、旅行ついでに日本で買おう、とうのは現実にある話です。とすると、ゴルフ旅行&ショッピングというのは、とてつもないポテンシャルを秘めた商品になり得ます。続きは次回。

クラブユーフォ!管理人・野田道貴
一季出版: 『月刊ゴルフマネジメント』(毎月15日発売)ほか、ゴルフ業界誌や専門書を出版。 http://www.ikki-web.com ※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』への寄稿を転載したものです