VOL.8 中国ゴルフマーケットは停滞期に入ったか?

それでもゴルフができるのは
一部の企業経営者たち

定かではありませんが、推測するにこの国のゴルフ市場は、用品の売上額とプレイヤーの数の釣り合いが取れていなかったのではないかと思います。売れている金額ほどには、ゴルファーはいなかったのでしょう。中国全土で100〜200万人のゴルファーがいる、と言われてきましたが、実数は数十万程度ではないのか? というのが最近の定説になりつつあります。なるほど、確かに贈られた道具を使い、人のカネでゴルフをしていた役人は、かつてはたくさんいたのかもしれません。しかし、彼らが一掃された後で残ったゴルファーは、巷で言われているよりは実はずっと少ないのではないか? というのが率直な印象です。

では、彼らは一体何者なのか。自分の財布を傷めないで済む特権階級ではなく、(当たり前ですが)自腹を切ってゴルフを楽しんでいる人たち。上海近郊では、会員権を買えば1000万円をくだらないコースばかり。ビジターでプレーすれば、土日で2万円強が当たり前。そんな状況でゴルフが楽しめるのは、どうしても企業の経営者層に絞られます。いまの中国人ゴルファーは、カネと時間に余裕のある経営者(とそれに準ずる人)たちだけです。中国で成功した経営者たちは、日本人的な感覚からすると想像できないほどの富を手にしている者が多数います。会社を経営しながらも、好きな時にゴルフを楽しめるだけの余裕がある。そしてたとえばそんな彼らが、いまいちばん興味を持っているのは、旅行なのかもしれません。

まだまだ低い日本のゴルフの認知度
旅行とゴルフを絡めた新提案を!

公務接待の禁止で、明らかに中国の市場は冷え込みました。その一方で、それでも依然伸び続けている業界もあります。その顕著なものが旅行です。中国の旅行マーケットは、前年比30%以上の高い成長率で年々伸び続けており、経済成長が止まったと言われているいまもその勢いはとどまるところを知りません。公費での視察旅行が禁じられてなお、個人が旺盛に旅に出かけているのです。

経済的に余裕のある中国人ゴルファーたちは、海外に自由に出かけられる層です。彼らは訪日旅行をしたことがあるかもしれません。しかし残念なことに、日本を旅することと、日本でゴルフをするということが結びついていないようです。「ホンマ」が日本のブランドであることは知られていても、そのホンマの祖国には、2000を越えるバラエティ豊かなゴルフコースがあるということは伝わっていないのです。

彼らは、日本のグルメや温泉には大いに関心があるかもしれません。独特な文化に対しても深い興味を示すでしょう。しかし、たとえば中国で北海道ブームを巻き起こした大ヒット映画『非誠勿擾』は誰もが知っていても、その舞台である北海道には150を越えるゴルフコースがあるなんて、ほとんど認知されていません。中国人に絶大な人気を誇る北海道も、ゴルフと結びついてはいないのです。千歳空港からわずか30分圏内に、無数のゴルフ場が存在していることを知っている中国人ゴルファーは、皆無だといっていいでしょう。そして、その事実を教えてあげれば必ず言うのです。あの北海道でゴルフができるなんて! と。

北海道を例に出しましたが、すでに旅行地として人気のある場所にゴルフを絡めることで、集客できる可能性を秘めている場所は他にもたくさんあるでしょう。たとえば最近では、中国からいちばん近い日本として、九州の人気が高まりつつあります。温泉やグルメ、ショッピングといったところが訪日旅行のキーワードですが、そこにゴルフを絡めてみる。そうすることで、まったく新しい旅の提案ができるのです。

クラブユーフォ!管理人・野田道貴
一季出版: 『月刊ゴルフマネジメント』(毎月15日発売)ほか、ゴルフ業界誌や専門書を出版。 http://www.ikki-web.com ※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』への寄稿を転載したものです