中国人のまだ知らない日本は
バラエティ豊かなゴルフ天国
教えてあげたい、と書きましたが、盛んに海外に出かけていく中国人ゴルファーも、日本のコースのことはほとんど何も知らないと思っていいでしょう。
北海道や沖縄、京都などをはじめ、東京以外にもいまや中国人は大挙して押し寄せてきています。2008年公開のヒット映画『狙った恋の落とし方。』は、その雄大な自然の描写でもって中国人の間に北海道ブームを巻き起こしましたし、富士山は世界遺産登録を受けてますます中国でも人気を高めました。
ところが、北海道には日本でいちばん多くのゴルフ場があることや、美しい富士の山姿を拝みながらラウンドできる場所があることを知っている中国人ゴルファーは、残念ながら皆無です。かなりの知名度がある日本のデスティネーションでも、それがゴルフとリンクしていない。多くの中国人観光客が訪れる場所なのに、そこでゴルフができることを知られていないのです。もったいないと思いませんか?
このように富士山&ゴルフという楽しみ方ができるコースが存在することを紹介すると、中国人ゴルファーはもちろん旅行社からの反響が少なくない
筆者としては、たくさんの中国人ゴルファーに、日本のゴルフ環境の素晴らしさを知って欲しいと思っています。筆者の住む上海は、長江河口域という極めてフラットな立地にあって、ゴルフコースも基本的に平らな土地がほとんどです。日本のように、アップダウンのある山岳コースや、風光明媚な丘陵コースなどにはまずお目にかかれません。
ならば飛行機でわずか数時間、お隣ニッポンで、バラエティ豊かなコースを回ってみませんか? と思うのです。日本に来れば、温泉というキラーコンテンツもある。そして来日した中国人のほとんどが感動する、グルメも楽しめる。大好きなショッピングだってし放題なのです。
中国人にとって割安な日本
機会損失の穴を埋める方法は
最近の中国の物価上昇率はすざまじいものがあります。2006年から上海に暮らしている筆者ですが、移住当初は日本と比べ安く感じられていた物価が、いまではすっかり日本と逆転してしまった感覚です。そこに人民元の高騰による為替変動も重なって、ほんの数年前まで、円換算すれば土日であっても1万円ちょっとだったプレーフィーは、いまでは軽く2万円を超えてきてしまいました。
一方、日本。オンライン予約システムの普及などもあり、ラウンド自体はずいぶんとこなれた料金で楽しめるようになりました。週末2万円もあれば、東京近郊でもそれなりのグレードのコースでプレーできるはずですし、地方へ行けば言わずもがな。そう、中国人にとっては、いまの為替状況ならば日本は「大変オトク」にゴルフができる場所なのです。なのに、情報が不足しているばかりに中国人ゴルファーの訪日はあまり見受けられない。つまり、多大なる機会損失が起きているのです。
一方で、受け入れ側の日本からすれば、どうやって中国人ゴルファーにアクセスをすればいいのかわからないかもしれません。また、ことばの問題もあり、中国人ゴルファーがやって来たところでどう対応すればいいのかという不安もあるでしょう。さらには、日本人が抱く、中国人に対するマナーの問題もあることと思います。
こうして見ると、ゴルフをテーマにした旅行の提案をすれば大きな可能性がある中国マーケットに対して、うまくアプローチができていない日本という状況が浮かび上がってきます。このミスマッチを埋めるためには、何が必要なのか。
もしこの溝が埋まれば、日本のゴルフツーリズムは、中国人インバウンド需要の吸収によって大きく前に進むのではないか。筆者はそう考えています。次回、さらに掘り下げていきたいと思います。