Vol.2 中国ゴルフはつかみどころのないマーケット!?

国はゴルフを認めていない?
許可を持っていないゴルフ場

さらに追い打ちをかけるのが、中国における「ゴルフ」の存在そのものの不安定さです。いまでこそ、経済的な自由度が高まり、外資を含む民間の企業活動が活発に行われてはいるものの、あくまで社会主義体制を敷いている国だということを忘れてはいけません。ゴルフのようなブルジョアなスポーツを、国家として認めていいのかどうか、という根底があります。

いや、何を言うか、実際に中国にはたくさんのゴルフ場があり、ゴルフメーカーが大っぴらにビジネスをしているじゃないか、と思われるかもしれません。でも、たとえばこの国の政治的な要人がゴルフをする姿を公に見せることは決してありません。現在の国家主席である習近平は、ゴルフが大好きだと巷間伝えられています。ところが、オバマ米大統領とゴルフ場を併設する施設で首脳会談を行っても、そこでゴルフをした、と報道されることは決してありませんでした。ゴルフ好きの二人が一緒にゴルフ場にいるのに、ゴルフをしないはずがないと誰もが思っています。にもかかわらず、そこには蓋がされるのです。これはつまり、いまでも中国では、国としては、ゴルフというスポーツを正式には認めていないに等しいということなのです。

ゴルフ場についても同様です。中国全土には、400〜500程度のゴルフ場があるとされていますが、そのうちのほとんどが「無許可」だと聞いたらいかがでしょうか? 現実として、国家は新しいゴルフ場の建設を禁じています。それなのに、上海近郊においても年々新しいコースが増えている状況は、どう説明できるというのでしょうか?

たとえ中央政府が認めていなくても、地方政府は積極的にゴルフ場建設を誘致していたりします。このあたり、非常にややこしい話なので簡単には言い切れませんが、不動産として用地を借り上げ(この国の土地はすべて国有)、その付帯施設として「ゴルフ場的なもの」を作るというのが一般的なスキームのようです。中国のコースには必ずや別荘が併設していますが、その理屈から考えれば納得がいきます。要するに、ゴルフ場に別荘がついているのではなく、あくまで主体は住宅であり、そこにたまたまゴルフをできる場所がある、というのが建前なのです。

にも関わらず、2016年のオリンピックで正式競技になるのをきっかけに、国としてゴルフを強化していくという話で盛り上がっています。さっぱりわからない、と筆者がいう意味が、理解していただけるでしょうか。

クラブユーフォ!管理人・野田道貴
一季出版: 『月刊ゴルフマネジメント』(毎月15日発売)ほか、ゴルフ業界誌や専門書を出版。 http://www.ikki-web.com ※当連載は、一季出版が発行するゴルフ業界誌『月刊ゴルフマネジメント』への寄稿を転載したものです