二人目のドクターは、アメリカ在住の極悪放射線科医さんです!
さよなら夏休み特別企画「日米韓No.1医療ドラマはどれだ?」第二回の今週はアメリカ編。栄えあるNo.1に輝いたのは『Dr.HOUSE』(2004~2012)です!…このドラマどのくらい知られてるんですかね?アメリカじゃ『24』よりも視聴率を稼いだそうです。日テレでも放送されて「US版ブラックジャック」なんてCMが流れていたそうなんですが、まあいいや。一番の見どころは主人公が天才外科医、ではなく天才放射線科医であるところなんですが、さてどんなNo.1 Doctor From The USなのでしょうか?
「ドラマに外科医はいらない」という斬新さ
放射線科医と言われて私が一番に思い出すのは、ある猫専門のおいしゃさんです。ズバリ名医。人間の医者でも町医者ではあったことのないレベルのロジカルな診察をされる先生でした。何でも猫の治療というのは他の動物よりもずっと難しいらしいんです。獣医学は家畜という農産物(商品)の価値を守るための医療で、ペット分野は脇役、おまけに猫は何か大事なところが他の動物と違って、たしか、詳しいことは覚えてないけど要は、そんな逆境で猫専門病院を標榜するニャース先生はそれまでに会った獣医さんとは全く違うアプローチをとる方だったのです。
ニャース先生の診察はやたら緊張感があります。微に入り細に入り問診し、「仮説」を立てて薬を選び、厳密に量と服薬タイミングを指示し、短い期間で細かく結果を集めていきます。期待された結果が出ない時には直ちに仮説を修正。慎重かつ迅速なトライアンドエラーは、まるで難解な事件に挑む名探偵のようです。ワトソン役の飼い主も大変です。週に何度も病院に足を運ばなくちゃいけないし、色々覚えなくちゃいけないし、適当なフィードバックをしてると怒られるし。このニャース、かなり怖いです。油断するとすぐシャーですからね。でも他の病院で治らなかった病気がびしっと治るし、ニャースのくせに終始徹底したロジカルな態度にはほんと、唸らされました。
そうそう、歯医者ではこんな経験をしました。ある朝起きたら歯茎の変なところから膿がだらだら出てて、顔は変形するわ高熱はおさまらないわで慌てて歯医者に行ったのですが、大学病院にまで回されたけど全然良くならない。どころか「悪い歯には見えないけどとりあえず膿が出てる近くの歯を全部抜いてみましょう」なんて床屋歯医者みたいなずさんな見立てをされまして。見かねた友だちが「地味だけどいい先生がいる」と教えてくれて、言われるまま行ってみたら本当に地味な歯医者さんでね、その地味な先生が細い糸状のものを膿の出てる穴にすすすーっと入れてレントゲンを撮ったんですね。したら一発ですよ。大学病院でも分からなかった膿の出元がどこにあるか瞬時に分かりました。今までのボンクラどもは一体何をしてたんだと。「私は内科医なので、ここからの治療は外科へ行ってください」と大学病院の口腔外科を改めて紹介されました。そこから先は、もう、工事。一ヶ月も膿み散らかしてましたから、抜歯どころか顎の骨まで削られる始末で、途中気を失ったりしつつ手術が終わってみたら、口の中がブラックジャックみたいになってました。つまり何が言いたかったかというと、「歯医者にも内科と外科があるんだな」というお話でした。
ニャース先生や地味な歯医者さんのような「切らない系の医療」の面白さは、今までドラマではほとんど取り上げられてきませんでした。しかし実は、内科医の見せる診断へのアプローチ、知性溢れる治療方法はまさしく通好み、いぶし銀のかっこよさがあるのです。そんな内科系診療科のなかでも最もマニアックといわれるのが「放射線科」。究極のロジカル獣医であるニャース先生もまさに放射線科のお医者さんでした。今回ご紹介する『Dr.HOUSE』の舞台もまた、放射線科を中心とした「解析医療部」というところ。つまり、超超マニアックな医療ドラマというわけです。ニャースの話からやっとドラマにたどりつきました。