美しき水と森の街に、あいつは必要か

熊本にゆるキャラはいらない

本日も引き続き帰省中。熊本にいます。

新しい実家は電車通り沿い。とはいっても通りからは少し奥まっていて、裏手には大学のキャンパスがあるので意外に静かな場所。街の中心、繁華街である通町筋や辛島町まで歩ける距離なので、利便性もこのうえない。

総じて我が両親、なかなかいいところに家を選んだじゃないか、と思います。

九州といえば、5年ほど住んだ福岡には愛着があって、もし日本に帰るとしたら、福岡に住むのも悪くないとはずっと考えています。でも今回、熊本も選択肢としてあり得るんじゃないかと思えるほどに、なんだかしっくりきています。

実はさっき知ったのですが、熊本はいつの間にか政令指定都市になっているのですね。人口74万人。市の面積でいうと福岡とほぼ同じようなものでありながら人口はほぼ半分。確かに福岡ほどの賑やかさはないけれど、その適度に間延びした感じが快適に思わせるのかもしれません。

なにより、お城のまわりを路面電車がゆったりと走っているその長閑さが、「日本の地方都市、かくあるべき」という自分の理想的なイメージとばっちりと重なって気分がいい。

どこを歩いていてもやたらとくまモンが目につくのが若干癪に障ることを除けば、熊本、非常にいいところだと、改めて再認識しました。

いや、あの熊さえいなければ、もっといい街なのに。

くまモンのビジネスモデルについて、いまさらここで言及するつもりはありません。著作権をほぼフリーにして商用利用を解放したことで、くまモンの露出が上がり、商品が売れれば売れるほどキャラクターの人気も増幅するという正のスパイラル。キャラクタービジネスの希有な成功例だとは認めるし、あの死んだ目をした熊のおかげでどれほど県内の企業が潤い、熊本のイメージが上がったか。計り知れない効果がそこにはあるのだとは思います。

思うけれど、熊本=くまモンの県、と根付いてしまったイメージは、決してプラスの影響だけではないんじゃないかと危惧してしまう。それくらい、この街はキャラクターに浸食されてしまっている気がします。

あんな虚構の生き物に頼らなくても、この街にはもっとしっかりとした素材があって、それを活かせばいくらでもPRできるはずなのに。浦安あたりにいる、ねずみの化け物みたいに強大な権力を持ち得るのならばまた話は別なのだろうけれど、所詮はぱっと出の一発屋だろうし、やがて飽きられて捨てられるときが残念ながら来てしまうことは想像に難くない。

くまモン失脚のとき、この美しい森と水の街が一緒にダメになってしまわないように、安易なキャラクター頼みのPRばかりに傾かないように祈るばかりです。