杭州=箱根説

フーチュンリゾートは箱根の奥座敷

都市というのは固有のものであって、その街にほかの場所をあてはめてたとえるのはあまりいいことではないと思っています。百歩譲って「東洋のパリ」だとかいう表現はまあありだとは思うけれど、「徐家滙は渋谷だよね」とか「南京路はまあ銀座みたいなもんですよ」なんていう無理矢理な説明を耳にすると、どうにも違和感を覚えてしまいます。

とはいえ、馴染みのない人にそのエリアのイメージや感覚を手っ取り早く伝えるには、このたとえ話は便利なことも確か。ということで、あえて言わせてもらいましょう。

杭州という場所は、上海からすれば「箱根である」と。

いや、かなり無理があることは承知のうえで言っています。杭州には温泉もなければ大涌谷も仙石原もない。関所も芦ノ湖もないし、小田急も箱根登山鉄道もケーブルカーもない。そもそも高原ですらない。もちろん駅伝も走らない。

それでも、昨日今日で杭州のリゾートに出かけてきた間にさんざん考えた結果、「杭州は箱根である」と言わせてほしいのです。

いまさらわざわざ説明するまでもなく、杭州はいわずとしれた有名観光地であり、歴史的にも地理的にも重要な江南の古都として栄えている経済都市です。中国の地理にさして明るくない人でも知っているような地名を引っ張り出して日本の土地に例えていう必要が、いまさらあるのかと。

それでも。
杭州って、上海からはあまりに身近すぎて、在留の日本人にとっては実は案外行ったことがなかったりする場所なんじゃないかなと。かくいう自分も4、5回足を運んだことがあるものの、すべて仕事の用件だったし、「いいとこだよね、それなりに」と思う程度で、わざわざ自発的に遊びに行こうと思うには至らずだったのです。

今回行ってきたフーチュンリゾートも、確かに有名ではあるものの、泊まったことがあるという人は実は案外少ないようなのです。それはなんでなのかな、ということを考えてみると、まあ、やっぱり料金的な問題だと思うんですね。我々が泊まったレイクビュースイートが、ラックレートで3,300RMB。サービス料を入れると1泊朝食で約5万円という室料設定。決して「気軽に」という料金ではないですね。

そんな金額を出すんならどこか近場の海外にでも行くよ、とでもいいたくなるような料金だと思います。でも、その金額に見合うだけの価値は充分にあるとおすすめしたい。おすすめしたいけれど、どうすればそのよさが伝わるのかなあと頭をひねったときに、ああそうか、ここは箱根だと思えばいいのかと思ったのです。

箱根って、ちょっといいところに泊まろうとすると平気で3万から5万くらい、宿代だけでかかってしまう。ちょいと東南アジアあたりになら行けてしまうくらいの出費を1泊の宿代として覚悟しなければならないわけです。それでもなぜみんなが箱根に行くのかというと、東京からのその「近さ」に尽きると思うのです。

「近い」という利点は、逆に言えば「遠出感」を奪ってしまうので、せっかく出かけるのになんだか物足りないという感覚に陥ることにもなる。でも、近さ故に移動時間は削られて、目的地でたっぷりと時間を過ごせるというメリットだって当然あるわけです。

フーチュンのような滞在型のリゾートは、そこでいかに長い時間を過ごせるかによってステイの充実度が大きく左右されるわけで、となると「近いから高い」という図式が成立したっておかしくない。

その考え方でいえば、ああそうか、ここを箱根の高級宿だと仮定すればちっとも高くないんじゃないか、と。
※自分にとって高い安いの問題は置いておいて、強羅あたりのハイクラスな旅館を選ぶような人にとっては高くないと思えるだろうな、という意味合いで。

単純に宿泊料金だけで比較検討してしまうとどうにも高いなあと思ってしまうからいまいち足が寄らないけれど、「強羅で5万円の宿に泊まるようなもんだと思って」という説明ならばこまかいことを言わなくてもわかる人にはわかるんじゃないかと。

その理屈で言うと、フーチュンは杭州の市街地からは1時間弱離れているのでさしずめ「箱根の奥座敷」とでもいえようか。

ということで、今後誰かにフーチュンとはどのような場所であるかと尋ねられたならば、箱根の奥座敷のようなところであると説明しようと思う。

伝わるかなあ。。