あれから2年。

ずいぶんと形は変わったけれど

2年前の今日、ちょうどお昼時。

東北への訪日観光プロモーションについて、ずっと練り続けてきた企画の打ち合わせを上海の郊外でしていました。

かつて、温泉旅番組の制作に関わっていたテレビ業界育ちとしては、東北の魅力を中国の人たちにどうにかして映像で伝えたい。たった1本の映画の影響で北海道がブームになるんだったら、東北の秘湯めぐりが人気になったってちっともおかしくない。八幡平あたりの雄大な景色は決して北海道に負けるものではないし、日本の原風景のようなものはむしろ東北にこそあるのだから、これを素材にしない手はない。

そう思って、テレビ番組とネットでの動画配信に旅行商品の販売を絡めた企画をこつこつと組み立てていたわけです。

その日は具体的な番組の内容や、制作スケジュールについての細かい話を詰めていました。いよいよそれまで準備してきたことが具現化に向けて進み出すね、とそこらへんのローカルなきったない店でビールで乾杯しながら8元くらいのランチを食べ、鼻歌まじりの上機嫌で市内に戻ろうということろで地震のニュースを知りました。

大急ぎで自宅に戻り、日本のニュースを見て愕然。まさについさっきまで、どうやって映像で紹介しようかと話していたようなエリアが壊滅していました。

東北に住む知人お世話になった方々その他もろもろの安否確認がひと通り落ち着いた数日後、改めて自分が時間をかけて準備してきた仕事の種がきれいになくなった現実と向き合わされました。

現地で被災された方々、ご家族をなくされた方々の痛みに比べればなんてことはありません。それでも、ひざから崩れ落ちるような喪失感に襲われたのは確かです。もっと率直に言うと、「これからおれ、仕事、どうすっかな……」というところで呆然とするしかありませんでした。

とはいえ、そんなところでじっとしていても仕方がないので、東北花めぐりと称して桜前線と一緒に北上したのが4月のこと。ぐるりと東北を回ってみて、直接の被災地も、そうでないところも、東北でインバウンドっていうのはどう考えてもムリだよなあ、それどころか、訪日旅行誘致自体が当面はNGだということで、自分の仕事の方向性をすべてリセット、準備していたことはとりあえずいったん棚上げ、となりました。

あれから今日で2年。

最近は東北には足を運べていないので実状はわかりませんが、日本全体への送客というところでの動きが戻ってきたことは確かだし、その当時は考えもしていなかったゴルフ関連の仕事を通じて、中国人ゴルファーに日本でゴルフをしてもらおうという流れも少しずつですが生まれつつあります。

あのころ考えていた形とはまったくもって違うけれど、復興支援と絡めて「東北でゴルフ(&温泉など)」という商品設計も組み立てられるような気運も出てきました。

今年は1本でもいいから、中国人ゴルファーを東北に送客する企画をなんとしてでも実現させたいと思います。
そしてその流れがいずれスタンダードなものとなるように、関係各所協力を仰ぎながらゴルフツアーとしての商品を作っていきたい。

どんな形であれ、人が現地に行くということは、それだけで意味があることだと思っています。ゴルフという娯楽を通じて、海外から人が呼べるならばそれには積極的に荷担していきたい。急速に広まりつつある中国ゴルフマーケットに身を置く者としては、人を日本に移動させることは最重要テーマでもあります。そこのところには、しっかりと力を入れていきたいし、できれば東北に、というところでひとつ形を作りたいと思っています。

それからもうひとつ。
上海に暮らす在留邦人向けの総合ゴルフサービスを提供する会社としては、上海で日本人がゴルフをすることで、東北の復興支援につながるようなそういう取り組みもしていきたいな、と。

うちの会社は、よその復興支援どころかまだまだ自分たちが支援を受けたいくらいの不安定さだけれども、たとえばコンペの売上げの一部でもチャリティに回せるような、それくらいのことならできないかなあと。うちのサービスを通してゴルフをしてくれたなら、多少なりともそれが東北に届けられますよ、という仕組み。

すぐにはちょっと難しいですが、これはいずれ地に足が付いたらやりたいところですね。

2年前の春、上海の日本人コンペの多くが「自粛」されました。こんな時期にゴルフなんて、というのは確かにあるでしょうが、別にゴルフをやめたことで誰かが救われるわけじゃない。だったらみんなで集まって楽しくゴルフをして、楽しんだ分を少しでもチャリティに回せばいい。

そういうふうな環境を作れればな、と。

そんなこんなで上海にて、2年後の3月11日を過ごしています。準備中の中国語媒体とそれに付随するサービスについて、今日もなかなかおもしろい打ち合わせをしてきました。中国ゴルフマーケットは、今日だって大きく動いています。