第37回『昨夜のカレー、明日のパン』

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今が旬の星野源出演、「生きていく人」を描く木皿泉最新作!

週刊がなし崩し的に不定期連載になりつつありますこの廃人ドラマニア。でも、やめませんよ。紹介したいドラマは山ほどありますからね。誰か私のふりして書いてくれればもっと一杯更新できるんですが…今週はそんな怠惰な私の心にも「感動」という焼き印をジュッとやっちゃった、木皿泉星野源ちゃん作品『昨日のカレー、明日のパン』(2014年/全7回)を、真面目にご紹介いたします!

 

どんなに悲しいときも、何かを食べなきゃ生きていけない

これからご紹介するこの『昨日のカレー、明日のパン』。質がよくないはずがないんです。それはもう条件から決まっている。西島秀俊、真木よう子、香川照之出演、TBSとWOWOWのタッグによる奇跡の映像化!なんてのよりもずっと信ぴょう性のある引き文句です。曰く、

NHK「BSプレミアム」枠、木皿泉脚本。

これでもう、勝ったも同然です。だってBSプレミアムは数字が関係しませんからね。何に尻を叩かれることなく地道に良作を生み出してきた、WOWOWの「ドラマW」と肩を並べる必見枠。そこに木皿泉です。数字的には瞬殺されても驚異的な受賞歴を誇る、知る人ぞ知る名脚本家。考えてみれば、木皿泉ほどBSプレミアムでドラマを書くべき作家はいないわけで、蓋を開けてみれば予想通り、いや予想を遥かに超えた秀作でした。テーマは「喪失と再生」です。手垢がつきすぎたこの手の話に、木皿泉はどのように挑んだのでしょうか?

物語は手間暇かけて作られた朝食が出来上がっていくところから始まります。メニューはぬか漬け、焼き鮭、納豆、ハムエッグ、お味噌汁に鍋炊きご飯。食卓を囲むのは、主人公のテツコ(仲里依紗)とその義父、通称ギフ(鹿賀丈史)。二人は炊きたてご飯を頬張る、と思いきや一膳は仏壇へ。前日そなえた固くなったご飯はギフの前へ運ばれます。仏壇には7年前に25歳で亡くなったテツコの夫一樹(星野源)の遺影が。そんな寂しくも穏やかな日常が過ぎていくある日、突然会社の同僚である岩井さん(溝端淳平)がテツコにプロポーズ……一樹という透明な檻のなかに閉じこもっていたテツコとギフの人生が、涙や笑いとともに再び動き出す。そんな物語です。

オチは大方の予想どおりなのですが、そこに至るまでの道と、喪失と再生の根底に描かれる「食べるという行為」へのリンクが面白いのです。特に第一回の朝食とパン、インスタントラーメン。「食べること」が「喪失」という主軸と直接繋がって

どんなに悲しいときでも、何か食べなきゃ生きていけない

という物語の「起点」となる台詞へと結実します。これは生命力溢れる言葉に聞こえますが、「空虚な現実を、嫌でも生き抜かなければ」という悲壮な言葉でもあるのです。

生きること、生きなければならないこと、そのなかで唯一の灯火となるもの。7年という月日を経てもはや生活の一部となってしまった喪失を、温かく丁寧に描くことで「再生」を浮かび上がらせる。こんな話、ちょっといいでしょ?と熱く語ってしまいました。

松下祥子@猫手舎